ブラジル・アマゾンの森林火災は今年急増しており、新たな極右大統領政権のもとで増加する森林伐採と気候変動への懸念に追い打ちをかけている。
今年これまでに、7万件を超える森林火災がアマゾンの熱帯雨林全体で発生した。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によるとこの件数は、少なくとも過去5年間で最高であり、昨年同時期と比較して80%以上増加している。8月19日、火災による煙は雲や強力な寒冷前線と重なり、2700キロメートルほど離れたサンパウロの街を暗く覆った。
森林火災急増はいくつかの要因がありそうだ。研究者たちは、気候変動によって「ますます増え、厳しさを増す干ばつ」でアマゾンの熱帯雨林が山火事の影響を受けやすくなったと警告してきた。しかし、現地の報道によると、一部地域の農場経営者が農作物や牛の放牧のためにじゃまな存在を取り除くという理由で、意図的に火を放っている。
環境保護団体によると、そうした農場経営者らはジャイール・ボルソナーロ大統領によって勢いづいている。ボルソナーロ大統領は大統領選中に、農業と採鉱のために熱帯雨林を切り開くことを約束したからだ。ボルソナーロ政権は、一貫して環境保護策の弱体化に取り組んできた。
ボルソナーロ大統領は最近、ブラジルにおける森林伐採の増加を強調したINPEによる統計の公表を受け、INPE所長のリカルド・ガルヴァン博士を解任した(ガルヴァン博士はMIT出身の物理学者でもある)。21日、ボルソナーロ大統領は、「私が民間公益団体(NGO)の財源を削減したことで、私の施政を辱めるために」NGOが火を放っている可能性があると発言した。大胆でナンセンスな発言だ。
9カ国にまたがるアマゾン熱帯雨林は、世界最大の炭素吸収源の1つだ。地表の植物に吸収される炭素は世界の約17%を占めている(もちろんアマゾンは、生物多様性と私たちが呼吸する酸素の豊富な源でもある)。
山林開拓のための意図的な火事を除いた自然発生の森林火災だけで、干ばつの年には数十億トンもの二酸化炭素を排出する可能性が最近の研究で明らかになった。
過去数年間、アマゾンの森林伐採率は急減していた。その大部分は「セーブ・ザ・レインフォレスト(熱帯雨林を守れ)」運動と、強化された土地使用規制のおかげだ。しかし今年に入り、森林伐採のペースは顕著に増加した。ある地域では、毎分「ほぼサッカー競技場並みの森林」が姿を消している(「「ブラジル版トランプ」誕生で地球規模の気候変動リスク」参照)。