以前から臆測があったファーウェイの独自OSが、8月9日に「HarmonyOS」として発表された。このHarmonyOSはモバイル業界にとって何を意味するのだろうか?
スマホ向けOSというより、メインはIoTデバイス?
HarmonyOS発表のプレスリリースを見ると、さながらグーグルかアップルのイベントのような会場だったことがうかがえる。中国・東莞市のスタジアムで開催された「Huawei Developers Conference 2019」は、ファーウェイのコンシューマー事業部が開催する年次イベントで、5000人以上の開発者が世界から集まったという。
コンシューマー事業部を率いるRichard Yu氏はHarmonyOS発表にあたって、「さまざまなデバイスとシナリオで全体的なインテリジェント体験をもたらす」とその目標を説明したという。HarmonyOSは軽量でマイクロカーネルアーキテクチャを採用しており、これがクロスプラットフォーム性、そして低遅延とセキュリテイなどのコンシューマーのニーズを満たすという。開発者には、一度アプリを開発すれば、多様なデバイスで動くと訴求している。
ファーウェイは発表時に、「まずはスマートウォッチ、スマートスクリーン、車載システム、スマートスピーカーなどのスマートデバイスで最初に採用する」としている。
その翌日、HarmonyOSを搭載した最初の製品となる「Honor Vision」を披露した。前日の話のとおりに、スマートTVであってスマートフォンではない。そこからも、同じグーグルでもAndroidではなく、Fuchsiaと競合するものという見方もできる。
Android 10ベースの「EMUI 10」を同時発表
Androidへの忠誠を示している!?
スマートフォンについてYu氏は、Androidが最優先であることを強調している。実際、HarmonyOSを発表したのと同じ8月9日、HuaweiはAndroidベースの独自UIの最新版「EMUI10」を発表している。EMUI10はベータ版のテストを行なった後に、次期ハイエンドのMateシリーズに搭載する計画だという。
一方で、Androidは米国企業のGoogleが開発するモバイルOSであり、トランプ政権の下で米商務省の「エンティティリスト」に載ってしまったファーウェイにしてみれば、ライセンスを受けられなくなる可能性がある(エンティティリストは輸出禁止措置の対象企業リストだが、商務省はライセンスを取得するなどの条件つきで輸出できるとしている。だが詳細はまだ見えない)。
Yu氏はWall Street Journalに対し、必要ならば「1日か2日で」スマートフォンのOSをHarmonyOSに切り替えることができると語っているが(https://www.wsj.com/articles/huawei-unveils-android-backup-but-prefers-not-to-use-it-11565346923?mod=searchresults&page=1&pos=17)、OSを変えることは簡単なことではない。グーグルのアプリは使えないし、それ以外のAndroidのアプリについても、多少の変更を加えるだけで動くというが、ユーザー体験は全く同じというわけではないはずだ。
実際、5年ぐらい前に“第3のOS”が立ち上がり始めた頃、ファーウェイは形式的には「Firefox OS」や「Windows Phone」に参加の姿勢を見せたものの、コミットすることはなかった。その代わり、リソースをAndroidとEMUIに集中させることで、Androidのトレンドを最大活用し、シェアを伸ばすことに成功した。また、メーカー由来のOSがうまくいった試しがないこともよく知っているだろう(サムスン「Tizen」、ノキア「Symbian」など)。難しさを知っているからこそ、HarmonyOSは慎重に進めるはずだ。
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