ミドルレンジを自然にまとめるのがレコードらしさ
人の声に厚みが出る
アナログレコードには、音楽全体の重心をミドルレンジに自然とまとめてくれる印象があります。楽器単体で見ると例えばまず、ベースの重心に変化はわかりやすいです。同じ曲のハイレゾ音源と比べてみると、超低域に沈み込むような深い響きは薄れる一方で、中低域でのベースらしい太さは増し、存在感はむしろ濃くなっているかもしれません。ボーカルも超高域の華やかさは落ち着かされ相対的にか中高域のしっかり感が強まり、人の声としての厚みを感じられます。
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love your Best(完全生産限定盤) [Analog] |
「ミドルレンジに自然とまとめてくれる」の「自然に」というのもポイントです。「キャロル&チューズデイ」のボーカルソングでも「メイドインアビス」サントラのインストでも、アナログ盤の音は、その曲のデジタルマスターにより近いであろうハイレゾ音源の音と比べて、前述のように明確な変化がありつつ、何も不自然ではありません。むしろ「聴き込む」のではなく「部屋に流しておく」のならばアナログの方がより自然で心地よいのでは?と感じるほどです。
アニソン好きに向けて、レコードの魅力を語るなら
前述のようなアナログならではの音の好ましさというものは残念ながら、アナログ再生システムに相当のコストを注ぎ込まないことには十分には引き出せません。例えば30万円のDAPは超ハイエンドですが、30万円のアナログプレイヤーは「本格システムのスタート地点あたり」くらいの扱い。それに設置スペースもかなり必要です。
ですがその世界にまで踏み込むつもりはないのであれば、それぞれ数万円程度のBluetooth対応アナログプレイヤーとBluetoothスピーカーの組み合わせでも、音だけではないアナログ盤の魅力は十分に楽しめます。例えば豊崎愛生さんベストアルバム「love your Best」は、アナログ盤では選曲が異なっています。アナログ好きな豊崎さんによる「アナログで聴いてほしい曲と曲順」になっているのです。音はさておき選曲や曲順、A面/B面の切り替えタイミングなどについては、超エントリーお手軽再生システムでも豊崎さんの意図をしっかり受け取ることができます。
またこの作品のジャケットは「昔のレコードみたいに顔がバーンって感じの」という狙いだそうですから、それを100%受け取ることができるのはアナログ盤だけです。CDとは物理的なサイズ、手応え、迫力が違う!ぶっちゃけそれだけのためにでも買う価値ありです。アナログ盤にはそういうアートアイテムとしての魅力もあります。
高橋敦
ライターとして主にポータブルオーディオ分野、たまに家電や楽器などの記事を執筆。様々な王国や市に在籍する多重国籍DDとして日々を過ごしている。アナログについては「プレイヤーの設置場所がない」を最大の理由にオーディオとしては静観しつつ、アナログ盤はコレクションアイテムとして時折購入。