マーケットプレイス、100社での実証実験など、AIパートナーとの広範な取り組みを日本でも展開
RPA×AIで“創造的な自動化”を、UiPathが「3つのAI戦略」発表
2019年07月31日 07時00分更新
RPAベンダーのUiPath(ユーアイパス)日本法人は2019年7月30日、より高度な業務自動化を目的とするRPAとAIとの連携強化戦略の記者説明会を開催した。幅広いAIパートナーとオープンに協業していく方針で、出席した同社 CEOの長谷川康一氏は、AIサービスとのコネクタなどを提供するオンラインマーケットプレイスの日本語対応開始、35社のAIパートナーと展開する国内100社規模の“RPA×AIソリューション”実証実験(POC)計画などを発表した。
発表会には長谷川氏のほか、UiPathのAIパートナーであるPetuum(ペテューム)、BEDORE(ベドア)、ABEJA(アベジャ)の各代表もゲスト出席し、それぞれが提供するUiPathとの連携ソリューションの紹介やUiPathへの期待などを語った。
RPA×AIによる高度な自動化の普及目指し、AIパートナーと広範な取り組み
発表会の中で長谷川氏は、新規発表を含む3つのAI関連施策を明らかにした。マーケットプレイス「UiPath Go!」の日本語対応開始、35社のAIパートナーと推進するユーザー企業100社での実証実験計画、RPAロボットに組み込んで実行するための機械学習モデル(MLモデル)/AIスキルを構築/デプロイする新製品「UiPath AI Fabric」の3つだ。
UiPath Go!は、UiPath向けのさまざまな自動化部品(コンポーネント)を無償/有償でユーザー企業や個人に提供するマーケットプレイス。英語版は2018年10月にサービスを開始し、現在はUiPathやパートナー各社が開発したコンポーネントおよそ600個が公開されている。これまでグローバルでは1万5000ユーザー以上が利用し、ダウンロード数は3万以上、企業アカウント数はおよそ150に及ぶという。
今回、英語以外では初めての対応言語となる日本語版が提供開始された。提供開始時点では約50個のコンポーネントが日本語で紹介されており、そのうち11個がAI-OCRや画像認識などのAI機能を利用するためのコネクターやカスタムアクティビティ、ワークフローテンプレートなどとなっている。長谷川氏は、今後さらに日本市場でのニーズが高い日本語OCRや日本語チャットボットなどのコンポーネントを充実させていきたいと語った。
「UiPathでは、RPAとAIが組み合わさることで、従来のRPAではできなかったことも自動化できる世界が来ると考えている。ただしそのためには、RPAを使いこなせる人がAIを使える、簡単に組み合わせることのできる環境が求められる。各社のAIとUiPathがあらかじめつながったものがマーケットプレイスに用意されていることで、どんどん自動化を進めていきたい。それがUiPath Go!だ」(長谷川氏)
2つめのAI施策は、AIパートナーとの協業による国内企業での“RPA×AI”実証実験の展開だ。長谷川氏は、現在のAIパートナーは35社あり、合計で100社での実証実験実施を目標としていると説明する。
そして3つめが、新製品であるUiPath AI Fabricのアーリーアダプタープログラム(早期顧客向け提供)の開始だ。AI Fabricは、RPAロボットに組み込んで利用するMLモデル/AIスキルを構築/デプロイ/管理するための製品となる。前述のUiPath Go!で提供されているAIスキルをダウンロードして、自動化プロセスに組み込むこともできる。
「これら3つの取り組みを通じて、ユーザー企業における現場業務の自動化をどんどん進めていきたい。たとえば手書き帳票の処理に多大な時間を費やしている現場を、AI-OCRを組み込んだRPAロボットで自動化することができれば、作業していた人はもっと対面の作業や業務プロセスのさらなる改善に時間をうことができる。RPAとAIの組み合わせにチャレンジしてもらう、その積み重ねが日本を元気にするイノベーションを生むことになる」(長谷川氏)
なお今回は、UiPathコミュニティのプラットフォームサイトである「UiPath Connect!」の日本語対応も同時に発表されている。
AIパートナー3社、それぞれの強みを生かしたRPA×AIソリューションを紹介
ゲスト登壇したAIパートナー3社の代表はそれぞれ、自社テクノロジーとUiPath RPAとの連携により実現するソリューションを紹介した。
AIプラットフォームを開発するPetuumのチュウ氏は、AI技術が高度に進化しているにもかかわらず、導入には専門スキルを持つデータサイエンティストやエンジニアが必要となるため企業における導入率はまだ低いと指摘。そうした状況を変えるべく、Petuumでは自社が持つAIモジュールをUiPathのAI Fabricに提供し、あらかじめAI技術が組み込まれたかたちで現場に展開していきたいと語った。
自然言語処理(NLP)技術/チャットボットサービスを開発するBEDOREの下村氏は、同社のテクノロジーは主にカスタマーサポート領域で利用されているが、UiPathと連携させることで、単に問合せ対応(照会応答)するだけでなく、他の業務システムに対する操作も自動化できるようになると説明。実際にUiPath社内で導入した事例では、それまでサポート窓口で有人対応していたアカウントの無効化/有効化に関する問合せの85%を自己解決化できたうえ、自動化によりUiPath側の対応作業も25%削減できる見込みだと語った。
製造/物流/小売などの業種AIソリューションを開発するABEJAの菊池氏は、現在は「RPA」「AI」はそれぞれ別のものと定義されているが、今後は両者が近づいて相互連携が進み、「AIが持つ価値を最大限引き出すフロントエンドがRPAになっていくのではないか」とコメント。専門的なAIスキルを持つさまざまな開発者や研究者が開発したAIモデルを「ABEJA Platform」に配置し、その能力をAPI経由でUiPathから柔軟に利用できる仕組みを提供していくと説明した。
最後にUiPath 長谷川氏は、RPA×AIの取り組みにおける同社の最終的な目標について、次のように語った。
「われわれの理想は、UiPathというRPAがオープンなプラットフォームとしていろんなAIパートナーとつながること。逆に言えば、顧客企業がUiPathを使うことですべてのAIとつながり、現場の人の手で自動化がどんどん進むこと。RPAとAIの組み合わせで“創造的な自動化”、RPAだけではできなかったような自動化を進め、現場からイノベーションが起き、日本と世界が元気になるような世界だ」(長谷川氏)