アップルが取得するテクノロジーと人材は、同社の5G無線サービスへの参入を強力に推進するだろう。
米カリフォルニア州クパチーノに拠点を置く巨大企業アップルは、インテルのモデム事業の大半を買収することを発表した。今回の買収によりインテルは、クアルコム(Qualcomm)などのライバル企業に比べ比較的小規模だったモデム事業から撤退することになるだろう。クアルコムのモデムは、アップルのアイフォーンのほとんどのモデルに使用されている。インテルは今年に入って、モデム事業を売却する意向を発表していた。
今回の買収によりアップルは、インテルのモデム事業で働く2200人の従業員に加え、モデム・アーキテクチャから携帯電話の規格に至る多様な技術をカバーする、1万7000件を超える無線技術の特許も手中に収める。一方、インテルは、買収された後も5Gモデム事業を継続できるが、スマホ用以外に限られる。
アップルが無線技術の特許を取得する理由はどこにあるのだろうか? ここで思い出されるのは、アップルがモデム技術に関連する特許侵害疑惑と特許権使用料をめぐって、クアルコムとの長期に渡る訴訟で痛い目に遭っているということだ。法廷闘争中、アップルはインテルからモデムを調達していた。
今年4月、和解の一環としてアップルがクアルコムと6年間のライセンス契約を結ぶことに合意し、訴訟は終結した。だがアップルは今回インテルのモデム事業を買収することで、再び紛争が起こった場合に備えて自社でバックアップ手段を得たという明確なメッセージをクアルコムに送っている。
訴訟での和解条件により、今後数年間で発売されるアイフォーンには主にクアルコムの無線技術が使用される。そのため、いますぐに重要な影響が及ぶことはない。だが、アップルはアイフォーンの輝くスクリーンの下に隠された技術に手を加えることを好む。恐らく将来、モデムを改良する斬新なアイデアを考え出すだろう。また、同社が最も優れたアイデアを今後6年間にわたって秘密にしておくことも予想される。