英国の規制当局は、全世界で2000億ドルとされるアドテクノロジー産業で違法行為がはびこっていると指摘している。
ほとんどの人が、実際にアドテクノロジーを体験しているだろう。買いたいものをオンラインで検索した後、何日も同じ商品が表示され続けたことはないだろうか。そこには、「リアルタイム入札」という仕組みが使われている。フェイスブックやグーグル、アマゾンのネット広告や、何千社というデータ仲介会社で一般的に使われているものだ。
リアルタイム入札とは、ユーザー・データのマーケットプレイスである。ユーザーがあるWebサイトを訪れ、ページを読み込むと、サイトオーナーはページ内の「枠」をオークションにかける。広告主は、自分たちに関係する製品やサービスに興味を持っているユーザーに接触したいと思っているので、その「枠」を買う。このプロセスには多くの企業が関わることもあるが、一瞬にして処理される。リアルタイム入札は、オンライン広告業界全体を支える仕組みであり、だからこそ今回のニュースが重要なのだ。
英国のデータ規制当局である情報コミッショナー事務局(ICO)は、これらの広く蔓延しているデータ駆動型オンライン広告が、英国および欧州連合(EU)の法律に抵触していると結論付けた。
ユーザーには、自身のデータの収集について同意するか、意思表示する機会が与えられていない。この仕組みを合法的に解釈するには、データ収集に関する内容をユーザー自身が理解している必要がある。だが、プライバシー・ポリシーや同意を促すポップアップは、説明を怠っていることが多い、というのが報告書の主張だ。
英国の規制当局は、フットワークが軽いことで有名だ。当局はこれらの問題を6カ月後に再調査する前に、アドテク企業に自ら対処する時間を与えると述べている。一方で、同時に広告業界がこの問題に対処したり、自主的に改善することを促すだけの証拠がないことも認めている。
だが、欧州委員会自体を含む欧州の他の規制当局の対応は、それほど慎重ではないかもしれない。 EU全体で、リアルタイム入札の違法行為について、少なくとも10件の訴状が提出されている。欧州の規制当局が、今後数カ月でこの業界をさらに詳細に調査する可能性がある。