ネイチャー誌に掲載された新たな分析によると、気候変動はこれまで武力紛争の要因としては比較的小さな役割しか持っていなかった。だが、仮に気温が産業革命以前の水準を2〜4℃上回ると、地球温暖化によって世界中で暴力行為が大幅に増加する可能性があるという。
6月12日に発表された論文は、スタンフォード大学、エクセター大学、オスロ国際平和研究所などに所属する、気候および紛争分野の高被引用論文著者11人による評価をまとめたものだ。
専門家の平均推定値によると、気候条件の変化は武力紛争が起きるリスクを「実質的に増加」させるという。気候が紛争に与える影響は、過去1世紀の事例ではおよそ5%にすぎなかった。最近まで、武力紛争を高めるリスクとしては、より深刻な貧困、社会階層間の不平等、そして近年起きた暴力的紛争の歴史などがはるかに強い影響力を持っていた。
だが、今回の分析によって、気温が2℃上昇すれば、武力紛争のリスクは13%増加すると示された。仮に気温が4℃上昇すればリスクは26%に高まる。地球の表面温度は産業革命前と比較してすでに1℃近く上昇しており、現在のエネルギー使用と排出量の成長曲線に基づくと、気温上昇が2℃に達するのは確実だ。
気温の上昇や干ばつ、洪水といった気候の影響はすべて、経済的打撃を引き起こす可能性がある。こうした経済的打撃によって今度は、貧困が増え、社会階層間の不平等や緊張が高まり、暴力行為を引き起こす要因が悪化していく。
専門家らは農業保険や生産研修、食料貯蔵の改善、紛争調停、平和維持活動や紛争後の復興への投資によって、気候変動による紛争のリスクを減らせるとの見方で一致した。しかし、気温が上昇するにつれて、こうした活動によるリスクの低下が効かなくなる可能性も、研究者らは指摘している。