国際宇宙ステーション(ISS)は今後、商業利用に重点を置くことになる。
米国航空宇宙局(NASA)は6月7日、ISSのリソースと微小重力環境へのアクセスを使って収益を上げたい企業の入札を受け入れると発表した。さらに、企業が送り込む民間宇宙飛行士の最長30日間の滞在も認める。
NASAはこれまで、教育的または技術的実証プロジェクトでのISSの使用を認められていた。今後はマーケティングや広告宣伝をはじめ、民間宇宙飛行士や工業製品にまで対象を拡大。ISSの商業化に反対の立場をとってきたNASAにとって大きな変化となる。一方、ロシアは民間人の受け入れやISSで企業のブランドを使うことに以前から前向きな姿勢を示していた。
商業利用には、NASAの乗組員リソースと貨物の5%を割り当てる。つまり、民間企業は最大175キログラムの貨物をISSに持ち込み、NASA乗組員の最大90時間の勤務時間を商業的業務に利用できるようになる。さらにNASAは、ISSに自社モジュールの追加を望む企業からの提案も受け入れるという。ISSの「ハーモニー(Harmony)」モジュールの先端ポートに民間企業のモジュールを接続できるようにする。
NASAは、この新しい商業プロジェクトを支援するため、2020年にも年に2回、民間宇宙飛行士を受け入れる予定だ。ISS部門のロビン・ゲイテンズ副本部長の説明によると、1回の打ち上げで送り込める人数にもよるが、最大で年間12人の民間宇宙飛行士を受け入れ可能だという。
ジェフ・デウィット最高財務責任者(CFO)によると、ISSでの滞在費は1泊3万5000ドル。「ヒルトンやマリオットなどのポイントは一切つかない」。生命維持やトイレの使用だけでも1日に1万1250ドルの費用が必要だ。企業は打ち上げにかかる費用のほか、自前で宇宙飛行士の訓練と選抜を実施する必要があるため、1回のミッションにかかる総額は数千万ドルにのぼるとみられる。
NASAは、ISSが利益を生み出すベンチャー事業になるわけではないと説明する。だが商業化計画は、ISSの維持費用の負担軽減には役立つ。今回の動きは、NASAが宇宙ステーションのインフラを運用するのではなく、民間の宇宙ステーションをレンタルする未来に向けた一歩にもなる。「私たちは積極的に取り組んでいこうとしています。ISSには物理的な運用限界があることを認識しています」とNASAの有人探査部門のビル・ゲルステンマイアー副長官は述べた。「民間部門が立ち上がり、どのように統合していくのかが分かるまで、しばらく時間がかかるでしょう」。