人工知能(AI)とロボット工学の第一人者たちが集結し、ロボット用オペレーティングシステム(OS)の開発に取り組む。現在の最先端の機械が抱える弱点を克服することが目標だ。
このスタートアップ企業は、カリフォルニア州パロアルトに拠点を置く「ロバスト・ドットAI(Robust.ai)」。創業者兼CEO(最高経営責任者)であるニューヨーク大学のゲイリー・マーカス教授によると、工場や倉庫で稼働する機械から家庭用の生活支援ロボットに至るまで、あらゆる種類のロボットに対応できる「コグニティブ・プラットフォーム」の開発を目指すという。ただし、この構想の実現に具体的に何が必要となるのか、マーカス教授はまだ明言していない。現在の産業用ロボットにも、機械学習を取り入れた研究用の機械にも、常識的判断を含む人間の知性のさまざまな資質が欠けているというのが同教授の主張だ。
ニューヨーク大学で認知科学を研究するマーカス教授は、深層学習を重視する現在のAIには多くの欠点があると歯に衣着せぬ批判を展開している。2019年9月に発行予定の書籍 『Rebooting AI: Building Artificial Intelligence We Can Trust(AIのリブート:信頼できる人工知能の開発に向けて)』で、マーカス教授は共著者のアーネスト・デービスとともにこの問題を追及する。マーカス教授はかつてジオメトリック・インテリジェンス(Geometric Intelligence)を創業し、2016年にウーバーに売却している。
ロバスト・ドットAIは、ロボット工学の第一人者も何人か関わっているドリームチームだ。CTO(最高技術責任者)を務めるのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のロドニー・ブルックス教授だ。ロボット掃除機「ルンバ」を生み出したアイロボット(iRobot)や、スタートアップ企業リシンク・ロボティクス(Rethink Robotics)の共同創業者であり、AIについての過熱する誇大広告に警鐘を鳴らした人物でもある。また、数多くの産業用ロボットに携わってきたカリフォルニア大学サンディエゴ校のヘンリック・クリステンセン教授がロバスト.aiの共同創業者となる。
ロバスト・ドットAIの創業はまさに時宜を得たものと言える。大手、中小を問わず、いくつもの企業がより高度な産業用ロボットの開発に取り組んでおり、ロボットに機械学習を取り入れる研究もますます増えている。しかしマーカス教授とブルックス教授の言い分は正しい。現状のAIでは、実現できるロボットの性能にも限界があるだろう。