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クリーンエネルギーへのイノベーション、遅れが顕著に

2019年06月07日 07時58分更新

文● James Temple

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5月27~29日にカナダのバンクーバーで開催されたクリーンエネルギーに関する国際会議「第4回ミッション・イノベーション閣僚会合/第10回クリーンエネルギー大臣会合(CEM10/MI-4)」に参加した国々は、「大胆な新しいプロジェクト」と国際協力をこぞって誇示した。だが、持続可能なテクノロジーの開発と展開の進捗は大幅な遅れをとっている。

背景はこうだ。2015年に採択されたパリ協定と並行して、気候変動を食い止めるべく、20以上の国が「画期的技術の開発と拡大」のための「ミッション・イノベーション」協定に署名した。これらの国々は、クリーンエネルギー・テクノロジーの研究開発への公的および民間の投資を2倍にすることを約束した。

今回のCEM10/MI-4会議を受けて5月29日に出されたプレスリリースでは、2015年以来の年間総投資額が、参加国全体で約50億ドル近く増加したと強調した。そもそものベースラインは約150億ドルだった。

一方で、「ミッション・イノベーション」の取り組みの一部として設立されたビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾスらが支援する10億ドルの長期投資基金のブレークスルー・エネルギー連合(Breakthrough Energy Coalition)は、欧州連合と共同で、欧州に焦点を当てた基金を立ち上げる予定だという。カナダ政府も、同様のプログラムを確立しようとしていると発表した。

これとは別に、米国、カナダ、日本、オランダ、および欧州委員会は、エネルギー貯蔵技術としての水素の利用促進を目的としたパートナーシップを発表した

しかし、明るいニュースはここまでだ。

非営利組織の情報技術イノベーション財団(ITIF: Information Technology and Innovation Foundation)のコリン・カンリフ上級政策アナリストは昨年12月に自身のブログへの投稿で、技術開発費用が2倍になるには、2021年までに300億ドルに達している必要があると記した。

カンリフの当時の分析 によれば、各国の自己申告の数値をそのまま信じるなら、2021年までには目標値の75%に達するはずだという。しかし、その数字を疑問視する正当な理由を挙げて、実際の進歩は目標値の約50%前後になるだろうと結論付けた。

ジョージ・メイソン大学の科学技術イノベーション政策センターのデイビッド・ハート所長は、電子メールで、他の最近の報告でもクリーンエネルギーの開発と導入に進展が見られないことが強調されている、と記した。

ハート所長は、国際エネルギー機関(IEA)による5月27日の発表で、評価した45のエネルギー技術と分野のうち、パリ協定で合意された目標値の達成に向けて予定通りの進捗を見せているのは、わずか7つだったことに言及した。その7つには、太陽光発電、電気自動車、エネルギー貯蔵が含まれている。一方で、スマートグリッド、地熱、二酸化炭素貯留、集光型太陽光発電などの分野は遥かに遅れている、と同報告書は結論付けている。

IEAは5月初め、太陽光、風力、水力発電などの再生可能エネルギーの世界的な成長が予想外に停滞していることも見い出した。2018年には、参加国全体で総計180ギガワット(GW)の再生可能エネルギーの設備容量が新たに追加された。しかしこの数値は、パリ協定の目標を達成するために、昨年から2030年まで毎年追加していく必要のある300ギガワットを遥かに下回っている。

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