グーグルの新しい研究は、いずれは機械学習を使って、肺がんの兆候をより早く発見できる可能性があることを示している。
グーグルの研究者であるダニエル・チェが開発したアルゴリズムの検査精度が、多くの熟練の放射線科医の検査精度を上回った。チェと同僚らは4万2000枚以上のコンピューター断層撮影(CT)スキャン画像を使って、悪性肺結節を検出するように深層学習アルゴリズムを訓練した。結果として得られたアルゴリズムは、偽陽性(本来は陰性であるのに誤って陽性と判定されること)の件数が放射線科医に比べ11%少なく、偽陰性(本来は陽性であるのに誤って陰性と判定される)の件数が放射線科医に比べて5%少なかった。研究論文は、5月20日付けのネイチャー誌に掲載されている。
2018年の米国の肺がん死亡者数は16万人以上に上り、肺がんは米国内のがんによる死亡原因の第1位となっている。CTスキャンは、がんのスクリーニング検査の1つとして命を救える可能性がある一方、信頼性に欠けることも多い。
チェと同僚らは、人工知能(AI)が世界中で肺がんスクリーニング検査の信頼性向上に役立つ可能性があると主張する一方で、より多くの患者を対象にした試験で、研究の正当性を立証する必要があることを認めている。実際、AIを使ってさまざまな種類のがんを検出することへの関心が高まっている。たとえば、機械学習を使って、乳がんや皮膚がんを検出する研究も発表されている。
これらは興味深い研究だが、小さな一歩と捉えるべきだ。プライバシー上の理由に加えて、現実世界のデータセットが調査研究に用いられるデータセットのように完璧ではないことから、医療の分野でAIを使用するのは依然として困難なままだ。
また、そもそもがんの治療には、がんの発見だけではなく、非常に多くのことが関わる点も注目すべきだ。たとえば、適切な治療方針の決定は、患者によって大きく異なるさまざまな要因に左右されることから、さらに自動化が難しい領域となっている。