その加工木材は、エアコンの使用を減らし、二酸化炭素の排出量を減少させるのに役立つ可能性がある。
メリーランド大学の研究チームは、リグニンを除去した木材を作成した。リグニンは木材中の他の主成分であるセルロースの分子を結びつける一種の接着剤のような機能を果たす。だが、リグニンは赤外線を吸収するので、日光が当たると木材を温めてしまう。
研究者らは、リグニンを除去した木材に残ったセルロースを加熱して圧縮し、天然木の8倍の強度を持つ加工木材を作り出した。
この加工木材は単に強いだけではない。淡色のセルロースは、入ってくるほとんどすべての可視光線を反射し、赤外線もほとんど吸収せずに反射する。周囲から熱を吸収して放熱することもできる。5月24日にサイエンス(Science)誌に掲載された論文によると、この加工木材を密着させた表面を最大10℃冷却でき、エネルギー・コストを20%から60%削減できるという。
エアコンの使用は、地球温暖化の原因の一つとして、顕著かつ急速に影響力を高めている。建物から熱を放出し、外の気温を上昇させることで、エアコンの必要性を増加させるという悪循環を作り出している。今回の加工木材を使用して建築された建物は、エアコンへの依存を、多少なりとも弱めてくれるはずだ。
この加工木材は、熱を下げる材料の分野においては非常に有益な存在だが、通常の木材よりはるかに高価だ。そのため、屋根部分の素材としてほとんど使用されないだろう。現在世界で増えている住居の大半は、都市部のマンション群であり、それらはたいてい安価なコンクリートで建造されている。今回紹介したような加工木材は今後、外壁の被覆材として使われる可能性があるが、燃えやすく、他の材料に比べて耐久性が劣る点は注意しておく必要がある。