4月11日の夜、イスラエルの民間団体スペースIL(SpaceIL)は、月への着陸を試みていた月面探査機「ベレシート(Beresheet)」の制御を失ったと発表した。ベレシートは2019年2月21日に、スペースXのロケット「ファルコン9(Falcon 9)」で打ち上げられた。楕円軌道を描きながら月の軌道内に到達し、月の周りを回りながら着陸の機会を伺っていた。
探査機が月の上空で降下していた最中、メインエンジンに問題が発生し、停止した。オンライン状態に戻った時にはベレシートとの通信は途絶えており、同機は墜落した可能性が高い。スペースILのモリス・カーン会長は、次のように述べている。「イスラエルは月に到達しました。ベレシートの旅はまだ終わっていません。イスラエルの次の世代が、私たちのミッションを完了してくれることを期待しています」。上の写真は、ベレシートが地球に送った最後の月面写真のうちの1枚だ。
スペースILは元々、民間による初の月面探査ミッションの成功を競うコンテスト「グーグル・ルナ・エックス・プライズ(Google Lunar X Prize)」に参加するために設立された団体であり、コンテスト自体は勝者なしで2018年3月末に終了した。同コンテストを主催していたXプライズ財団は、着陸に失敗したにも関わらず、スペースILチームに100万ドルの賞金付きの「ムーンショット賞」を授与すると発表している。宇宙コミュニティの多数の有名メンバーが、ツイッターを使って、お悔やみとお祝いの言葉の両方を述べている。アポロ計画で宇宙飛行士を務めたバズ・オルドリンは、次のようにツイートしている。「決して望みを捨ててはいけません。あなた方の大変な努力、チームワーク、イノベーションは、皆を感動させています!」
着陸にこそ成功しなかったものの、ベレシートのミッションは、多くの金字塔を打ち立てた。イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(Israel Aerospace Industries=イスラエルの航空機メーカー)で宇宙部門トップを務めるオーパー・ドロンはライブ配信中に、いまやイスラエルは月の軌道の周回に成功した7番目の国となり、月面に到達した4番目の国になったと述べた。スペースILは、グーグル・ルナ・エックス・プライズに参加したチームの中で、探査機を月の軌道に乗せることに成功した最初のチームになり(「「時間切れ」の月面探査コンテストが育んだ、宇宙ビジネスへの夢」を参照)、最初の民間団体となった。