ソフトバンクがヤフオク!ドームで
5Gを活用したVR野球観戦を実証実験
ソフトバンクは3月22日、福岡 ヤフオク!ドーム(以下、ヤフオクドーム)にて「5Gを活用し、多視点切り替え可能な3Dパノラマ映像を用いたVR試合観戦」を記者向けに公開した。
今回のシステムは、ヤフオクドームのバックネット、1塁側、3塁側それぞれのカメラマン席、ライトスタンド上段に2台ずつのカメラを設置。そのデータをエンコーダーに送り、コンテンツサーバーからコアを経由して、ヤフオクドーム内に設置した5Gの基地局から別途設置した5G端末へとワイヤレスで伝達させ、さらにルーターを経由してVR用HMD(ヘッドマウントディスプレー)で視聴できるというもの。5Gでの接続は基地局から5G端末のみで、カメラから基地局までは光ファイバーなどの有線接続となっている。
ソフトバンクのテクノロジーユニットモバイル技術統括 モバイルネットワーク本部 本部長の野田真氏は、実験を行なっている背景について「モバイル通信技術は10年サイクルで世代が上がっている。19年度から5Gがスタートするが、多種多様で創造もつかないようなサービスが登場し、個々のサービスに合わせたネットワークが必要」とコメント。
今回のシステムのこだわりポイントとして、同社のモバイルネットワーク本部 アドバンスド事業推進室 VR事業推進課 課長の加藤 欽一氏は「臨場感と視点、コミュニケーション」の3つを挙げている。臨場感としては広い視野角と高精細な画質でのストリーミングを実現。4k画質で左右それぞれの目に配信可能だ。さらに視点としては前述のとおりスタジアム内に撮影ポイントを4ヵ所設置。それぞれのアングルでの観戦を瞬時に切り替えられるようになっている。
もうひとつのコミュニケーションでは、最大5人までが同じグループとして、同じVR空間で野球観戦が可能。HMDをかぶったユーザーが、それぞれアバターとしてVR空間に登場しリアルタイムで会話やリアクションが行なえるので、遠く離れたもの同士でも同じ場所で観戦している雰囲気が味わえるわけだ。
ちなみにVR空間は、実際にヤフオクドームのスーパーボックスをイメージしている。スーパーボックスはヤフオクドームの4階から6階に位置し、オープン戦でも1室10万円を超えるケースもあるスペシャルルーム。その高級感がVRで体験できるのもポイント。
今回のシステムは、本来は球場外にいるユーザーが楽しむためのものだが、今回は実験のためヤフオクドーム内に設置した5Gアンテナを使用し、電波をスーパーボックスに設置した5G端末で受信という形式。筆者も実際に試してみたが、スーパーボックスがしっかりと再現されておりリアル。さらに目の前にスタジアムの風景が広がっており、たしかに臨場感も高く、同時にテストした記者同士で会話も遅延なく行なえた。
同日に開催されていたオープン戦では、ファンクラブで募集した来場者も体験。実際にHMDをかぶってみた来場者からは「審判の後ろに立って観ている感じ。ピッチャーの球筋などもわかって楽しかった」と高評価だった。
野田氏によると「今後は野球だけでなく音楽イベントなどでも試していきたい」とのこと。たしかにスポーツイベント以外にもコンサートや演劇といったイベントにも合いそう。特に複数人で同時に同じコンテンツを見られるのが楽しいと感じた。5Gがスタートして普及することには、コンテンツの楽しみかたはガラッと変わりそうだ。