バイアンプ駆動に対応、シングルでも有効なパラレルBTLも
M-CRシリーズの特徴のひとつに、ステレオ(2ch)ではなく4chぶんのスピーカー出力を搭載している点が挙げられる。ここが音響メーカーとしてのこだわりだ。動作モードとしては、1組のスピーカーをバイアンプ駆動(高域と低域にそれぞれ1chぶん使用)したり、2組のスピーカーをA系統とB系統にそれぞれつないで切り替えられるA+B出力が選べる。
M-CR612でも、これらの接続方法を選べるが、さらに「パラレルBTL」という新しい動作モードも追加した。バイアンプ駆動は、M-CRシリーズの特徴ではあったが、その仕組みを利用するためにはスピーカー側もバイワイヤリングに対応した接続端子を備えている必要がある。パラレルBTL接続は、A系統・B系統のスピーカー出力を並列につないで制動力を高めるもの。2倍のダンピングファクターが得られる。シングルワイヤリングの接続端子しかない、一般的なスピーカーでも利用可能だ。
バイアンプ対応は購入動機の大きな割合を占めるものの、利用率が比較的高い国内でも、20%以下のユーザーにしか使われていなかった。そこで、より多くのスピーカーで4chアンプ搭載の利点を生かせるようにしたという。
音質面では、まずCD再生用のクロックを上位機種の「SA-12」と同等の低位相雑音クロックに変えた。
電源部についても改良を加えた。ひとつはD級パワーアンプ(TIのTAS5142)の前段に置いてあるPWMプロセッサー(TIのTAS5558)用の電源を、3.3Vの専用電源としたこと。加えて、CD基板、メイン基板、ネットワーク基板で使用しているコンデンサーの一部を大電流でも電圧変動が少なく、急な電流変動にも追従する“導電性高分子電解コンデンサー”とした。
ここは1メーカーに決め打ちするのではなく、3メーカーから供給を受けた3タイプの部品を要所要所(合計5ヵ所)に配置している。従来機種同様、パーツ選定にはHi-Fi機器的な発想で細かく配慮している。
ヘッドホンアンプについても、3段階のゲイン切り替え機能を持つ高音質なものにしており、Hi-Fi向けの単品CDプレーヤー「CD5005」と同等クラスだという。