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消費電力はハンガリー並み?ビットコインによる環境汚染が深刻化

2019年03月18日 18時25分更新

文● Mike Orcutt

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ビットコインは深刻化する環境問題を抱えており、再生可能エネルギーでは解決できない。 これが、経済学者のアレックス・デ・フリースが3月14日に新たに発表した研究論文の結論だ。

ビットコインの電力消費量と二酸化炭素排出量に関する非常に厳しいアセスメントで知られるデ・フリースは、学術誌「ジュール(Joule)」に発表した論文で、陰鬱なニュースをさらに更新している。ビットコインのネットワークはその他多くの暗号通貨と同様、資源集約的な「採掘」プロセスによって分散型台帳を検証しているが、デ・フリースによるとこのネットワークの年間電力使用量は少なくともハンガリーの年間電力使用量に匹敵するという。

デ・フリースは、従来の銀行業における現金を使わない取引の1回あたりの消費電力量が0.4キロワット時であるのに対し、ビットコインは単一の取引で491~766キロワット時の電力量を消費すると推測している。さらに、ビザ(Visa)の取引では0.4グラム、グーグル検索では0.8グラムの二酸化炭素が排出されるのに対し、ビットコイン取引による二酸化炭素排出量は1回あたり233~364キログラムだと概算する。

ビットコインが深刻な環境問題を引き起こしているというデ・フリースらの意見に意義を唱える人々もいる。こうした人々は、多くのマイニング施設は安価な再生可能エネルギーを利用できる地域に設けられているという証拠を引き合いに出す。たとえば、全世界の採掘用設備の48%は水力発電による余剰電力が豊富な中国四川省の地方部にあると推測されている。しかしデ・フリースは論文の中で、四川省では雨季の水力発電容量がその他の季節の3倍に上ることを挙げる。そのため、一時的に余剰電力を活用することはできても、採掘のために電力需要の絶対量が年間を通じて増加するのであれば、雨季を除く季節には、その需要は石炭火力発電によって賄わなければならないことが多いはずだと述べている。

また、再生可能エネルギーの使用では、ビットコイン関連の電子機器廃棄物問題も解決できない。デ・フリースによれば、旧式の採掘チップが山積みになっていく勢いは、銀行業分野による電子廃棄物の排出ペースを遥かに上回っている。プルーフ・オブ・ステークなどのより資源効率の良いプロセスへの切り替えるか、メイン・ブロックチェーンを使わずに取引を実行する方法を開発すれば、ビットコインのネットワークがより持続可能なものになるかもしれないとデ・フリースは結論づけている。

デ・フリースがビットコインの電力消費量の算出に用いた方法論は批判を受けている。最も際立っているのは恐らく、データセンターのエネルギー消費に関して多くの論文を発表してきたエネルギー研究者のジョナサン・クーメイ博士によるものだろう。しかしクーメイ博士自身が認めているように、 採掘用装置がいくつ、どこに設置されていて、どんな冷却装置が使用されているのかを正確に知ることは難しい。データが不足しているため、生じているかもしれない問題の規模について、確信のない推測を巡らせるしかないのである。

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