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『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』に続く6本目の快挙を達成

『運び屋』クリント・イーストウッド最新作 3つのポイントを見逃すな!

2019年03月10日 16時00分更新

文● 上代瑠偉

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3.イーストウッドの終活のような映画?

 今作の脚本家ニック・シェンクは、前回イーストウッドが主演および監督を務めた『グラン・トリノ』の脚本も務めた人物である。

 前作の下調べをするときに多くの元軍人に会ったシェンクは、彼らは『グラン・トリノ』の主役ウォルト・コワルスキーのように世の中に怒りを抱えるタイプと、今作のアールのように怒りを隠すチャーミングでほかの人々をすぐにくつろがせるタイプに二分されると感じたという。

 『グラン・トリノ』は主人公ウォルト・コワルスキーの愛車グラン・トリノが『ダーティハリー3』でハリー刑事が乗っていたものだったり、主人公が犬を飼うという設定が『ダーティハリー4』を思い出させたり。彼の映画人生を総括しつつ、過去の贖罪を果たすという遺言のような内容だった。

 キャラクターの軽やかさが象徴するように、今作は『グラン・トリノ』よりも一歩進んだ作品だ。映画評論家の町山智浩氏は、今作の主人公に関して「イーストウッド本人が語っていますが、この作品の主人公は彼自身を投影したキャラクターです。半自伝的な作品として捉えて良いと言っていました」と述べている。今作は遺言というよりは、終活のような映画と言えるだろう。

 エンドロールを眺めていると、著者の胸には「いつも仕事や恋愛を優先して家族は二の次で、劇中では正義のために人殺しばかりしていたのに。やっとさまざまな重荷から逃れられたんだね。ちゃんと家族と向き合い、あいかわらずマイノリティーに優しくて。実話もので初めて監督と主演を務め、その映画をふたりの親友に捧げた。しかも、ブラッドリー・クーパーという弟子にも恵まれて……」と、いろんな想いが込み上げてきた。泣いた……。

 今後、監督と俳優を両方する予定はあるかと聞かれると、イーストウッドは「物語やその時の気分次第です。誰かにしてもらった方がいい時もあるし、自分でした方がいい時もあります」と答えている。

 彼はアールのように気分屋だ。次の映画出演は、何年後になるかわからない。ぜひこの機会を逃さずに、イーストウッドの集大成『運び屋』を劇場で味わってほしい。

●公開情報
・『運び屋』原題:THE MULE
・2019年3月8日全国公開
・監督&出演:クリント・イーストウッド(『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』)
・脚本:ニック・シェンク(『グラン・トリノ』)
・出演:ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシア、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィ―スト、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ
・配給:ワーナー・ブラザース映画
・レイティング:G
・上映時間:1時間56分
公式サイト

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