米国が中・短距離核ミサイルの使用を禁止する条約を破棄した翌日、ロシアも同条約から離脱した。ウラジミール・プーチン大統領は、ロシアは新しいハイテク・ミサイルの開発に取り組む、と新しい科学技術を用いた武器開発競争の幕開けを示唆するような発言をしている。
米国は2月1日、1987年に調印した中距離核戦力(INF)全廃条約の撤退を宣言した。 ロシアが条約条項に違反していることを理由に、昨年12月4日、米国はロシアが60日以内に条約を再び順守しなければ正式に離脱すると表明していた。
米国と北大西洋条約機構(NATO)は、条約が定めている500キロメートルの射程範囲を超えるロシアの地上発射型巡航ミサイル、ノバトール9M729(Novator 9M729)に不満がある。一方でロシアは、米国のミサイル防衛システムを形成するミサイル発射装置をルーマニアに配備したことに不満を抱いており、ロシアへの攻撃に使われる可能性があると指摘している。
条約の崩壊は、武器開発の新しい時代の到来を告げる可能性が懸念される。プーチン大統領、外相、国防相のクレムリンでの会談(写真)の記録によれば、プーチン大統領はロシアの対応は「シンメトリカル(釣り合った)」なものになるだろうと述べている。しかし同時に、地上発射型極超音速中距離ミサイルの新しい開発プロジェクトに着手すべきであるとも述べている。 極超音速とは、少なくとも音速の5倍の速度での飛行を意味する。
プーチン大統領は、昨年、ロシアが手がけている極超音速ミサイルについて触れ、「火の玉のように」打撃を与えると豪語している。また、アバンガルド(Avangard)と呼ばれる極超音速システムの第1回目の試験を昨年12月に実施したと発表している。 米国も中国と同様に極超音速ミサイルに取り組んでいる。現在のところ、こうした武器に対する防衛手段はない。