梅本氏 アカツキはビジョンを実現することこそ会社の究極の目的と思っています。売り上げや利益といった財務的なものも大切ですが、会社が利益を上げる目的は、ビジョンを実現して世の中に価値を出すため。そのために会社は潰れてはいけない。将来長きにわたって存続し、世の中に価値を提供し続けるために会社は利益をあげる、と考えています。そして、我々が提供する価値とは、人をワクワクさせること、人と人がつながること。そのためにゲームを作っています。
しかし、ゲームをやるために人が街に出るということはあまり多くはありません。ところが、ワールドカップの予選に日本代表が勝って出場が決まると、渋谷の交差点に青いユニフォームを着た人が集まる。親子三代でスタジアムに応援に行く人もいますね。このように、スポーツは人を動かします。アカツキのビジョンを達成するものとして、サッカーはまさにふさわしいものだと確信しています。
ヴェルディの羽生社長(東京ヴェルディ株式会社 代表取締役社長 羽生英之氏)や森本副社長(同 取締役の森本譲二氏)とは、ヴェルディがクラブワールドカップで優勝して、例えばF.C.バルセロナと対戦する。バルセロナにはヴェルディが育成した選手がバルセロナで10番をつけている。結果はヴェルディが勝利して、渋谷のスクランブル交差点では緑(ヴェルディのチームカラー)のハイタッチであふれる――そういうことを目指したい、と話しています。
――東京ヴェルディは現在J2です。株式を取得することでアカツキができることは何だとお考えですか? やりたいこと、変えたいところはありますか?
梅本氏 スポーツを競技とビジネスに分けてみたとき、アカツキとしてはまずビジネスの部分でお手伝いしていきたいと考えています。
ヴェルディの強みは人材輩出の力と思っています。これをビジネス上でどう活用していくか――ブランド事業になると思います。ブランド事業とはファンを作ること、ファンにどのような価値を提供するかを分解していくことです。
そこで我々ができることは何かというと、基本的にはゲームでやってきたことと同じです。ゲームにもファンがおり、物語や楽しみという体験を提供します。ゲームの世界では体験をKPIに因数分解してひとつひとつのKPIを改善することで、ユーザーに長く楽しんでもらう――その結果、売上が上がる、ということになりますが、これをスポーツでもやっていきます。スタジアムを例にとると、ユーザーがどのようにしてサッカー観戦のためにスタジアムに来るのか。ここをちゃんと因数分解していけば、入場者数は増えていくでしょう。そうなるとスポンサー収入も増えます。ファンが増えて、売上もちゃんと増やすということができます。
アカツキにしてみれば、これまでゲーム、デジタルで培ってきた知見をリアルで展開するということになります。