桃源郷の描写で
生田さんの魅力を十全に引き出す
では実写テストに移ろう。オートサロン会場を歩いていたところ、グッドイヤーブースの受付で前回のEOS R取材でモデルをお願いした生田ちむさんを発見! 生田さんはファン投票で選ばれる「日本レースクイーン大賞」を2年連続で受賞した人気のレースクイーンだ。しかもオフの日には1人で都内から鈴鹿サーキットに行きレース観戦をするほどのモータースポーツ好き。そのためか、今年は日本レースクイーン大賞のほか、2018年の東京中日スポーツ親善大使の権利が送られる「東京中日スポーツ賞」も合わせて受賞。モータースポーツの女神様だ。
年始のご挨拶もそこそこに、受付業務の邪魔にならぬタイミングで上半身を数カットの撮影。本当は生田さんのスレンダーな全身像をお届けしたいのだが、撮影環境の都合後ろに引くことが叶わず、また業務の都合、離席もままならなかったため、全身カットを撮ることができなかったことはご了承いただきたい。
絞りは開放のF1.2にセット。シャッタースピードを1/60としたところ、ISOはなんと100まで落とすことに成功! AFは前回のテストで有効性が確認できた「瞳AF」を使用。人物撮影をされる方はぜひ試していただきたい。大口径レンズにしては、AFの速度は驚異的。しかも一発で決まっていく。これは快感だ! ファインダー越しに生田さんと目が合いドキッとしながらシャッターを切った。
撮影後、上がりを見て驚いた。素晴らしい描写と言わずして何といえようか。生田さんの愛らしい表情を見事納めることに成功した。解像度はとても高く、コントラストもしっかり。実は壁との距離は近いにも関わらず、なだらかなトーンとなって決して写真を撮ることに適しているとは言い難い環境においても、人物を綺麗に浮き立たせている。四隅がやや暗いが、それが視線を集める効果にもつながっているように感じる。
左目に対して右目はなだらかにアウトフォーカスしていくのは、まさにF1.4の世界なのだが、F1.2は、その一歩上をいくとろけ具合。まさに桃源郷の世界だ。人間知らない方が幸せな事が多々あるが、このRF50mm F1.2L USMの描写はまさにそれである。通常、このような開放付近の撮影においては、AFだけで合わせることは難しく、最後にマニュアルフォーカスで微調整ということが多いが、EOS Rは開放からでも確実に合焦するので、より積極的に誰でもF1.2の絵を楽しめる。技術の勝利である。
キヤノン vs シグマ!
最強50mmレンズ決定戦
とはいえ、これだけ見ても何がなんだかわからないかもしれない。そこで手持ちのレンズで市場評価の高いシグマの50mm単焦点レンズ、「50mm F1.4 EX DG HSM」と比較することにした。
これは後出しジャンケンみたいなものなので、シグマにとっては明らかに不利な話な上に、シグマは12万7000円、相手は32万5000円と20万円近い差がある。しかし、シグマのレンズが出た当初は「この解像度は凄い!」と驚いたし、最強の50mm単焦点レンズの名を欲しいままにしていた。最強50mm頂上決戦、誰もが気になるところだろう。
まず外観を比べるとキヤノンの方が一回り大きく重い。しかし、RFマウントアダプターを取り付けると、高さはほぼ一緒になる。仔細に見るとキヤノンよりシグマの方が前玉が大きいのは意外だった。AFはキヤノンの方が速いものの、どちらも迷いもせずに合焦する。使い勝手として大きな差はない。撮影はF1.4で行なった。
シグマに対してキヤノンとでは色味が若干異なる。キヤノンの方がハイコントラストであり、また偽色や収差も少なく、背景のグラデーションもキヤノンの方が綺麗に感じる。とはいえ、それは重箱の隅をつついた時の話で、パッと見たところでは同じレンズで撮ったのでは? と思うほど。写真に詳しくない人に見比べてもらったが、違いを見抜く人と見抜けない人ではっきりと差が出た。
究極名描写のキヤノン
圧倒的コスパの良さのシグマ
究極的な描写を求めるならキヤノンに軍配が上がるが、シグマは大健闘どころか、コストパフォーマンスの良さが際立つ結果となった。キヤノンのレンズがF1.4ならシグマで十分だろう。しかし、半段の明るさと桃源郷のような世界を知ると、キヤノンのレンズが欲しくなってしまう。
新しくなった50mm単焦点レンズは、そのためだけにEOS Rを導入するに十分な魅力をもったレンズであることは言うまでもない。そして、このレンズを基準として、キヤノンは他の単焦点レンズも投入してくることだろう。デジタル写真の時代において、筆者は味より解像度を追い求めてきたが、RF50mm F1.2L USMは解像度を維持しながらも色気を感じさせる。これは悪魔的なレンズだ。