360 Reality Audioの包み込まれる音楽再生を体験
CES 2019の会場に用意されていた360 Reality Audioでは、視聴者の耳の形に合わせたキャリブレーションも含めてデモンストレーションを実施。まず、13個のスピーカーを用いたリファレンスルームで、耳の中に測定用マイクを入れた形でスピーカーで再生して測定。これによりユーザーごとの聴覚特性に合わせたキャリブレーションができ、その後ヘッドホンを装着した状態で音楽を流すと、スピーカーと同じ音場で再現できる。
実際に360 Reality Audioのサウンドを体験してみると、楽曲はポップミュージックをリスニングしたが、音楽制作の時点で頭上の斜め後ろの位置にボーカルが配置されていたり、楽器が自分を取り巻くように聞ける、没入感あふれる音楽制作が行なわれていた。バスドラムの音は前方足元の下の方で響いており、制作の時点で南半球も活用されていて、まるでアーティストの演奏しているステージの真っ只中で音楽を聞くような臨場感となっていた。
そして、マイクによるキャリブレーションを済ませてヘッドホンで音楽を聞くと、自分の周囲を取り巻くような音のレイアウト、そして頭上の斜め後ろから流れるボーカルの位置感までほぼ完璧に再現! 実際に音楽の流れているヘッドホンはもちろんステレオなのだが、制作側の意図通りに再現される。
普及にあたって、CES 2019で実施したような耳に測定マイクを入れるキャリブレーションはできないのは当然のこと、標準状態のままでもHRTF(頭部伝達関数)によるバーチャライズも利用可能だ。
ワンボディーのスピーカーで
360度のサウンドが可能!
また、360 Reality Audioのユニークな技術として、ユーザーがスマホのアプリを通して自分の耳の形状を撮影することで、画像を元に耳の形状による音の反射をシミュレートし、チューニングする事もできる。
そして、CES 2019の会場で実施されたもうひとつの360 Reality Audioデモンストレーションが、なんとワンボディーのスピーカー(内部は3ch+3ch+1chの構成)によるサウンド再現だ。デモンストレーションは水滴のような自然音と音楽で行なわれていたが、実際の360 Reality Audioのサウンド効果として高さ方向と耳の後ろの高い位置まで、ある程度の再現に成功していた。あくまで技術デモンストレーションだが、空間の中に1個のスピーカーを設置するだけで、360度の方向を持った臨場感溢れるサウンド表現が可能と考えると夢も広がる。
360 Reality Audioの新しいサウンドフォーマットが登場する事もあり、まずは「コンテンツがどう増えていくのか?」が普及のカギを握る。制作ツールについてはオブジェクトオーディオで音をレンダリングできるツール、そしてマルチトラック音源をコンバートして制作を開始できるツールをソニーが開発。360 Reality Audioに賛同しているソニーミュージック、ワーナー・ミュージック参加アーティストの楽曲を提供する、世界中のスタジオへの提供をスタートさせている。
そして、配信についてはCES 2019のタイミングで「Deezer」「nugs.net」「Qobus」「TIDAL」と4つのサービスによる連携が発表済み。最後に再生環境についてはスマホが利用可能で、アプリ側にバーチャライズ技術が標準で提供される。
360 Reality Audioは、ソニーにとってクリエイターとユーザーをつなげるという、まったく新しい体験を届ける技術。そして、スマホと一般的な2chのヘッドホンで利用可能と普及に向けてのハードルもさほど高くはない。CES 2019で4社の提携音楽サービスが発表された事もあり、早期の登場に期待が高まる技術だ。
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