日本の目指す新たなデータ活用の姿とは
NPO法人の日本メタデータ協議会は11月28日、第7回となるオープンカンファレンスを開催した。このカンファレンスでは、「貨幣から情報へ、データ活用新時代とメタデータ ~データエコノミーの新潮流で世界が変わる!~」と題し、元内閣府副大臣の福田峰之氏と、日本とエストニアに拠点をもつハイブリッドなベンチャー企業であるプラネットウェイ代表の平尾憲映氏が登壇。インターネット界の巨人・GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に立ち向かっていくための日本の行政、企業のありようを示唆した。
日本メタデータ協議会は、情報通信コンテンツ等におけるメタデータの普及啓発、標準化・国際化を推進すると共に、著作権者の権利保護に寄与することを目的とするNPO。メタデータとは、データに付帯するデータのことで、たとえば買い物履歴データに付帯する消費者のプロファイルなどがこれにあたる。GAFAなど、現在のインターネット界の巨人たちは、そうしたマーケティングデータを、半ば独占的に利用することで今日の地位を築き上げてきた。日本では、こうしたデータの利活用という面では大きく後れをとっている。しかし、この日登壇した両氏は、まだ日本にも次代のネット社会をリードする存在足りえるチャンスはあると提言する。
沖縄をモデルに、日本のキャッシュレス化を促進
福田峰之氏のカンファレンスでは、「地域発データ活用モデルの作り方」と題し、氏の取り組む「キャッシュレスアイランド沖縄決済コンソーシアム」について講演を行った。
主要国のキャッシュレス化がすでに5割を超える中、日本ではまだわずか2割程度しか普及しておらず、相変わらず貨幣流通が主だ。この現状を打破すべく、沖縄地銀4行が参加し、沖縄県をモデルケースに、国内のキャッシュレス化を促進し、高利便性や安価な決済の実現を目指す取り組みだ。
福田氏は「地域発でのデータ活用の取り組みでは、1社のデータだけでは使えるデータにならない。どういう枠組みをつくり、どういう人を参加させ、どういったデータを提供してもらうかを考えねばいけない」と語った。
データの主権は個人に帰属すべき
後半に登壇したプラネットウェイの平尾憲映氏のテーマは「個人がデータ主権を持つ時代とメタデータ」。自社の事業を“データの主権を個人に戻す”取り組みだと話す。
プラネットウェイの手掛ける「プラネットクロス」は、IT先進国であるエストニアのX-Roadをベースに民間転用したセキュアな情報インフラ。同じく同社のプロダクトである「プラネットID」は、いまひとつ普及率の伸び悩むマイナンバーに代わって、セキュアな個人認証を可能にするID技術。かつてロシアのナショナリティなサイバー攻撃を退けたほどの堅牢性をもつ情報インフラと、セキュリティが担保されたIDで、個人が持つデータを、誰に、どの範囲まで提供するかを、個々人が判断して許諾できる仕組みづくりを行っている。
平尾氏は「X-Roadは、分散型のデータ管理システムで、どこかにデータを集めて管理するというわけではない。それでは第2のGAFAをつくるのと同じこと。それぞれの企業や機関がもつ個人データは、本人の要請に応じてそれぞれの管理サーバーからプラネットクロスを通じて瞬時に集められて開示される。どこの誰が、どんなデータを持っていて公開したのか追尾できる。透明性と中立性が保たれているのが目指すべき本来のインターネットの姿。それを取り戻すのがプラネットウェイのミッションであり、それは日本から変えていくことができる」と言う。「インターネットの扱い方は、現在、米国式、ロシア式、中国式とあるが、どれも政府か、政府と密接した巨大企業がコントロールしている。一方、欧州では、GDPR法などが施行され、こうしたデータの独占状態にくさびを打ち込んだ。日本の企業群とエストニアの技術で、資本主義の限界を新たなあり方に変えていこうと思っている」
およそデータの利活用という面では、主要国に大きく差をつけられている日本だが、こうした取り組みによって、また大きく世界をリードする存在に返り咲く日も遠くないかもしれない。