バイオテクノロジー企業のピボット・バイオ(Pivot Bio)は、2019年に市販向け製品を発売するため、ビル・ゲイツのエネルギー・ファンドや他の投資家から7000万ドルの資金を調達した。
カリフォルニア州バークレーに本拠を置くピボット・バイオは、植物のための善玉菌(プロバイオティクス)を開発している。合成肥料の重要な栄養素である窒素を産み出す潜在能力を持つ微生物を見つけ出したピボットの研究者は、その微生物が能力を発揮・強化できるように遺伝子操作した。ピボット・バイオは初期製品として、トウモロコシ作物の種子の植え付け時に使用できる液体加工品を作り出した。
初期の実地試験では、微生物で処理された区画は、合成肥料を使用した区画に匹敵する収穫を生み出した。一度の使用で済み、肥料を何度も散布するより時間が短縮できるため手間暇が軽減される——。これが農家に向けたピボット・バイオの宣伝文句となっている。
収穫量よりも重大な懸念事項は、合成窒素肥料の製造時には相当な量の温室効果ガスが排出され、気候変動に影響を及ぼしていることだ。過剰な肥料の散布によって、土壌微生物が肥料に含まれる窒素を亜酸化窒素に変換し、気候変動の問題を増大させている。亜酸化窒素自体が強力な温室効果ガスなのだ。また、肥料を含んだ水は河川を汚染し、米国では五大湖やメキシコ湾で藻の大量発生や「デッド・ゾーン(生命を維持できるだけの酸素がない領域)」の元凶となっている。
「肥料が関係する汚染の低減を始められれば、文字通り地球を掃除していることになります」とカルステン・テンメ最高経営責任者(CEO)はインタビューで語っている。
気候変動や汚染問題に対処できる製品を開発しているため、ピボット・バイオはブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)からの資金援助を受けている。ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズはビル・ゲイツが支援し、気候変動のリスクを低減できるテクノロジーの進歩に貢献することを目的としている10億ドルのファンドだ。
シンガポールの投資会社であるテマセク(Temasek)もまた、シリーズBラウンドで投資している。初期の支持者にはモンサント・グロース・ベンチャーズ(Monsanto Growth Ventures)やビル&メリンダ・ゲイツ財団、米国国防先端研究計画局(DARPA)が名を連ねている。
ピボット・バイオは獲得した資金を、商用製品の販売支援に加え、播種前処理された種子製品の開発や、米と小麦を含む他の作物向け微生物の開発に使用する予定だ。当初、米国の農業生産者に焦点を当てていたが、ブラジルやアルゼンチン、カナダの市場もターゲットにしていく計画だ。