わずか2Lというサイズながらも6コアのCore i7-8700を搭載可能なサイコムの小型パソコン「Radiant SPX2700H310」(関連記事)。高い性能は魅力的だが、気になるのが熱の問題だ。タワー型のデスクトップですら持て余すことがあるこのCPUの熱に、どこまで耐えてくれるだろうか。意地悪ともいえる高負荷テストで、性能と熱性能をチェックしてみた。
フルスペックの状態でベンチマークと熱性能をチェック
テストしたRadiant SPX2700H310の試用機の主なスペックは、Core i7-8700、32GBメモリー、500GB SSD(NVMe対応)、960GB SSD(SATA接続)、「Noctua NH-L9i」(CPUクーラー)という、ほぼ最高スペックとなっているものだ。これ以上の熱源は増やせないほど強化されているだけに、かなり過酷なテストといえる。
熱性能のテストの前に、まずは基本的な性能をチェックしておこう。CPU性能はレンダリング速度から性能を調べてくれる「CINEBENCH R15」、SSDの速度はストレージベンチマークの定番「CrystalDiskMark」を使用した。
CINEBENCHR15のスコアは測るたびに数値がブレるとはいえ、極端な変化はなく、大体1240cb前後となっていた。これだけ小さなケースでもしっかりと性能が発揮できているのは素直に関心してしまった。もちろんファンの音は大きくなるとはいえ、それでもタワー型よりも静かなくらいだ。
SSDの速度はさすがにNVMe対応なだけあって、シーケンシャルリードで3.4GB/秒、ライトで2.5GB/秒を越えている。何度か計測したが速度は安定しており、大きくはぶれなかった。サイコムオリジナルのSSD用ヒートシンクを装着しており、熱で速度が遅くなるという心配はないようだ。
ストレステスト「OCCT」で高負荷時のCPU温度と動作クロックを調べる
本題となるRadiant SPX2700H310のCPUの温度と動作クロックについてみてみよう。負荷にはストレステストの「OCCT」を使用。テスト項目は「CPU:LINPACK」で、64ビット、AVXをオン、全コア使用にチェックを入れ、10分間負荷をかけた場合の挙動をみてみた。なお、CPUは各コアごとの温度がわかるが、傾向はすべて同じだったため、動作クロックと同じ「Core #0」だけを掲載する。
無謀とも思える小型PCへのCore i7-8700搭載だが、意外にもCPU温度は低く、動作クロックもベースクロックを死守しており、性能が極端に低下するといった心配はなさそうだ。ただし、長時間の負荷となるだけにファンの回転数はかなり上昇しており、ちょっと離れた位置からでもファンの騒音がわかるくらいにはうるさくなってしまった。
Radiant SPX2700H310は、標準ではUEFIの設定でファン回転数設定が「Silent」となっており、性能よりも静音性を重視したものとなっている。Silent設定では、負荷の少ないときは動作しているのか心配になるほど静かだ。
では、この設定をより高回転となる「Standard」へと変更すると、CPU温度と動作クロックはどう変わるのだろうか。気になったのでこちらもOCCTを使って実験してみた。
Standardはファンの回転数が高くなりやすい設定となるため、そのぶんCPUもよく冷える。全体的にCPU温度が下がるだけでなく、動作クロックも高くなりやすいので、長時間CPUに負荷をかける用途、例えば動画エンコードなどに使うのであれば、SilentよりもStandardの方が向いている。
ただし、そのぶんアイドル時からファンの回転音が気になってしまう。静音性を重視するなら、文字通り「Silent」設定で使う方がいいだろう。
性能を重視しないなら発熱の少ないCore i5やi3を選ぶのもあり
発熱が大きいCore i7ではどうしても高クロックになりにくいため、タワー型パソコンと比べてしまうと若干ではあるが性能は低くなってしまう。とはいえ、これだけ小さいのに熱の心配なく使えるというだけでも十分すごい。性能をあまり重視しないのであれば、より発熱の少ないCore i5やi3を搭載して静音性を高めるというのもありだろう。
机の上に置いてもジャマにならない小型PCでもCPU、メモリー、ストレージなどがカスタマイズ可能で、自分好みのスペックにできるというBTOパソコンのメリットをもつRadiant SPX2700H310。選べるパーツ数が多く、高性能から静音重視まで自由な構成へ変更できるだけに、納得がいくまでじっくりと選んで購入したい。