業務改善に効く最新ビジネスクラウド活用術 第21回
顧客満足度の向上は従業員満足度向上に通じる
カスタマーサポート「Zendesk」は企業でどのように使われているのか聞いてみた
2018年09月11日 09時00分更新
ここまで連続3回で「Zendesk」の活用法を紹介した。今回は、Zendeskの最終回ということで、Zendesk社長 藤本寛氏に、Zendeskについていろいろと聞いてみた。
エージェントが使いやすいサポートツールはデンマークで生まれた
カスタマーサポートのためのコミュニケーションツールである「Zendesk」は2007年にデンマークで創業し、現在11年目。創業メンバーでもあるMikkel Svane氏がCEOを務めている。現在、グローバルに展開し、12万5000社に導入されている。
「10年前にカスタマーサポートで使われているツールは使いずらいものでした。どこに情報があるのかわからないので探すのが難しいですし、そもそも情報がないということもありました。サポート業務を担当するエージェントからすると大きな手間がかかっていたのです。そこで、デンマークらしく極力シンプルにデザインし、情報を探しやすくしたサービスを作ったのです」(藤本氏)
2007年というとちょうどiPhoneが発表された年。シンプルデザインが注目を集め、ちょうど時流に乗った形になる。創業後2年経った頃、デンマークからアメリカへ移転。エンジニア人口の多さと市場の大きさを狙ってのことだ。その後、積極的に開発を続け、2014年にはニューヨーク証券取引所に上場した。その後も順調に成長を続け、現在の売上は年間500億円強になっているという。
同社はもともとデンマークで創業したので、グローバルに顧客を抱えている。もちろん、現在はアメリカが最も大きな市場ではあるのだが、世界160の国と地域で使われているのが特徴だ。
創業時からインターネットネイティブのクラウドサービスとしてスタートして、最初はメールもしくはホームページのフォームからの問い合わせをサポートしていたという。そのため、顧客にはインターネットでサービスを展開している企業が多く、中でも比較的BtoCが多いそうだ。導入企業としては、グローバルでは急成長したUberやAirbmb、日本ではクラウド会計サービスを提供するfreeeなどがある。ベンチャー企業が多いが、レガシー企業の新規事業部門でベンチャーのような使い方をしているところもあるという。
起業したてのベンチャー企業などでコールセンターがまだない時でも、ユーザーや見込み顧客とコミュニケーションしていく必要がある。そのため、ソフトウェアを開発するエンジニアなどが片手間で問い合わせを受けていることも多いが、そうするとメインの業務的に悪影響が出てしまう。Zendeskはこのようなベンチャーを支援するため、手頃で使いやすい価格体系を用意。実際に、3~5人のスタートアップから使い始めるというケースも多く、100人、200人規模にスケールすることもあるそう。グローバルでは、数千人のサポート部門で使っている事例もあり、どんなステージでも活用できるツールといえる。
もちろん、顧客からの問い合わせに対応する競合サービスはほかにもある。たとえば、大企業ならCRMが入っている可能性が高いが、そのベンダーの多くはカスタマーサービスのソリューションを用意しており、そこと比べられることがあるそう。また、小さいサポートチームの場合は、メール共有システムと比較されることもある。しかし、どちらも案件のチケット管理システムとオムニチャネルという考え方が腹落ちすれば、すんなりと導入されることが多いそうだ。
シーズナリティに対応しカスタマーエクスペリエンスを向上させる
Zendeskは顧客が困ったときに、企業に問い合わせる際に使われるサービス。メールやチャット、電話といった複数の連絡方法があるが、どのチャネルから連絡があっても、顧客の過去の情報を一元的に見ながら一番いい回答を返し、顧客の支援をするプラットフォームというコンセプトだ。この複数の連絡方法、つまりオムニチャネル(マルチチャネル))への対応がZendeskの大きな特徴となっている。カスタマーサポート業界でいうところの「チケット」単位で問い合わせをくくって、漏れなく迅速に、かつ満足できるように業務を回していくことができるのもポイントだ。また、問い合わせを管理することにより、どんな問い合わせがどんな顧客から来ているのかという分析も行なえる。
さらに「Zendesk Embeddables」という機能で、アプリやウェブページとシームレスに統合することもできる。たとえば、従来はスマホアプリから問い合わせをしたくなったら、メールアプリやブラウザーが起動する必要があった。しかし、「Zendesk Embeddables」を利用すれば、ゲームアプリの中で問い合わせができ、ゲームの世界観を変えずに済む。アプリを切り替えないので、問い合わせ後に戻ってくるのも簡単というメリットもある。
APIも豊富に用意しているので、インテグレーションするのも簡単だ。既存のCRMから顧客情報を引っ張ってきて、オムニチャンネルやカスタマーサポートの生産性向上を実現するといったことも可能。実際、日本ではまだまだ電話での問い合わせも多いのだが、そこはアライアンス型でほかのCTIベンダーとAPIで連携しているとのことだ。
Zendeskはライセンス体系もユニークだ。ユーザー数課金でスタートプランなら月額5ドルからという手ごろな価格も魅力なのだが、月契約になっているのがありがたいところ。
「Zendeskは本当にスモールビジネスを支援しており、1ユーザー1ヵ月から利用できます。ほかのベンダーさんはいやがるところだと思いますが、我々は減ることも許容しています。問い合わせが増えることが予測される時だけ月契約でユーザーを増やし、不要になったら減らせるのです。年間契約だと、一番需要の高いところにユーザー数を合わせる必要がありますが、Zendeskならシーズナリティに合わせて人員配置ができます」(藤本氏)
顧客満足度を上げることで従業員満足度も上げて成長していく
Zendeskの日本法人は4年前から活動しており、すでに国内で2000社の導入を達成している。しかし「正直、個人的には進出が早かったかなと思っています」と藤本氏が言うように、当時はZendesk本体もそれほど日本に投資する状況ではなかった。そのため、技術力のあるベンチャーに自分で導入してもらうというスタイルで広まったそう。その後、アメリカで上場し、本体に体力がつくと日本への投資家が本格化する。現在、人員は3倍になったそうだ。
「今後の目標は、大きくふたつあります。カスタマーサポートサービスをもう少しビジネスに近い形で、収益源にしたいという想いを持たれている企業様を支援していきたいと思っています。カスタマーサポートを単純にお客さまの問い合わせ窓口というところから発展させて、ビジネスのファンクションとして一段上げたいと考えています」(藤本氏)
もうひとつが、オムニチャネルによるカスタマーエクスペリエンスを実現し、顧客満足度を向上すること。そして、顧客満足度が上がることにより、従業員の満足度を向上させることだ。
「カスタマーサポート業界はなかなか人が定着しないという課題があります。人が定着しないので、人手不足にもなっています。長く働き続けていただけるのが一番いいと思います」(藤本氏)
Zendeskの昨年度の成長率はグローバルで40%だったが、日本法人はなんと75%と大きな成長を遂げている。CEOはおもてなしという面で世界の先頭を行っている日本でZendeskが受け入れられれば、世界のどこでも受け入れられるのではないかと期待しているという。
今回、レビューして感じたのは、ZendeskはUIがシンプルなので現場のスタッフでも活用できるということ。細かいワークフローの設定を行なうというよりは、顧客を向いてコミュニケーションするという点に特化している。利用料金も手頃な上、月払いできるのもありがたい。日本で盛り上がっているスタートアップ勢に導入が進み、飛躍していくことだろう。
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