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FC東京に出資するミクシィ、モンストとJリーグは共通点ある

2018年08月27日 06時00分更新

文● 竹中玲央奈(リンクスポーツ) 編集● ガチ鈴木 /ASCII編集部 写真●曽根田元

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 F.C.バルセロナへのスポンサードやヴィッセル神戸への投資をする楽天、鹿島アントラーズにスポンサードするメルカリなど、IT企業がサッカーのスポーツビジネスに積極的に進出が話題になっています。その中で2017年夏には、ソーシャルネットサービス「mixi」やスマートフォンゲーム「モンスターストライク」を展開している株式会社ミクシィが、新たにスポーツビジネスに着手することが報道されました。

 現在はミクシィでエンタメ事業を手掛ける「XFLAG」が、JリーグのFC東京と、Bリーグの千葉ジェッツをスポンサードしており、スタジアムやアリーナを盛り上げるべく、様々な取り組みしています。

 ミクシィは今後、スポーツ界をどのように変革していくのか。2018年6月に新社長に就任した木村こうき社長に展望を伺いました。

株式会社ミクシィ 木村こうき代表取締役社長執行役員

スポーツが「エンタメ」としてふさわしいワケ

――木村さんはスポーツビジネスをどのようにお考えですか?

 まず、私たちはミクシィをIT企業ではなく、コミュニケーション創出企業であると思っています。mixiやモンスターストライクなどのサービスを通して、仲の良い友人や家族とのコミュニケーションをどう楽しくしていくかを考えている企業です。

 私たちはスポーツもコミュニケーションだと感じています。ひとりで見ているよりも、気心の知れた仲間と一緒に見たほうが、より感動は増幅されるものです。スポーツをしている方からすればセンセーショナルな言い方かもしれませんが、ある種でスポーツはコミュニケーションの良い題材ともいえます。

 スポーツを通して、いかに優良なコミュニケーションを生んでいけるか。その取り組みの中で、実際のスタジアムやアリーナでの体験を、より良い方向に変えていくことができるのではないかと模索しています。

 例えば、ハーフタイムショーやフードコーナーの質をもっと上げていったり、家族の憩いの場になるような工夫であったり、スポーツチームと協力して環境を改善していければ良いと思います。その結果として観客数が増えていくことで、スポーツ観戦による収益を増やしていくことができるのではないでしょうか。

 また、スマートフォンを使った新たなコミュニケーションメディアを作りたいと考えています。スポーツを題材として、友だちや家族と盛り上がれるような体験ができるものを作っていきたいです。

――モンストを運営するミクシィの「XFLAG」がFC東京に出資し、スポンサーになった経緯を教えてください。

 どこを狙っていたというわけでもないですが、FC東京とのご縁がありスポンサーになりました。サッカーはこれだけ海外で人気があるにも関わらず、日本ではJリーグというトップリーグですら、脚光を浴び切れていないと感じています。

 そんな状況の中で、首都・東京にあるチームがもっと強く、かっこよくなっていくことは、日本サッカー界の重要な課題となります。日本サッカーはもっと変えていけると思っていますし、すごく魅力的な話だと思います。

『FC東京』への出資に関するお知らせ(関連プレスリリース)

――木村さんご自身はスポーツを経験されていたのでしょうか?

 部活動で真剣にスポーツに打ち込んだことはないですが、ボーイスカウトとして山登りをしていた経験があります。少人数のパーティーで楽しんでいることが多く、それゆえに大きな団体で活動しているスポーツに憧れはありました。

 自分で身体を動かすだけでなく、観戦することも好きです。

――ご自身がスポーツを観戦していて、どこに魅力を感じていますか?

 私は仕事としてゲームデザインをしてきて、エンターテイメントに重要なのは「緊張の緩和」であると感じました。ある一定の緊張状態を与えていって、その緊張が解放される時に人は興奮を覚えます。

 ジェットコースターが良い例で、頂上に登っている時は緊張がだんだん上がっていきます。その緊張が頂上から下に落ちていく時には解放されて、怖いけど気持ち良いという感覚になります。

 モンストに関しても強敵がいて、やるかやられるかの状況で、未来がわからないからこそドキドキがあります。その強敵に勝った時に、仲間とハイタッチをして喜びが生まれます。

 スポーツにも共通するものがあって、筋書きのないドラマだからこそ、観客に緊張が生まれます。サッカーでいえば攻めている時は緊張感が上がり、ゴールが決まった瞬間に緊張から解放されますよね。

 そういったサイクルを作るのが、エンターテイメントの王道だと考えていますし、スポーツはみんなで盛り上がるエンターテイメントにふさわしいコンテンツです。

プロクラブの支援を通じて、地域の活性化にも寄与

――スポーツチームに出資することによって得られるリターンをどのように考えていますか?

 まず、企業の露出という面はあまり気にしておらず、ロゴマークすら入れなくても良いと思っています。スポーツを宣伝のために使おうとは一切考えていないですし、スポーツをもっと観客の感動させて、収益が得られるコンテンツにしていきたいです。

 ただ、結果的にロゴマークは入れさせていただいて良かったと思う点はあります。従業員からすると、ユニフォームに自分たちのロゴが入っていることは誇らしく感じられます。

 特に今季はFC東京が好調なので、より励まされています。私たちだけでなく、ユーザーからしても、誇りに感じてもらえる点はあるのではないでしょうか。

――7月27日(金)にはFC東京のホームゲームで「XFLAG Day」を開催しました。どのような狙いがあるのでしょうか。

 サッカーファン以外も集まる空間にしたいですし、できれば多くの仲間と一緒に観戦してもらいたいと考えています。実際にスタジアムに足を運んでみれば、サッカーの面白さに気づいてもらえるかもしれないですし、飲食を楽しみに来ても良いと思います。

 当日はモンストユーザー1万人に向けて無料招待を実施しました。ユーザーは数千万人いるので、倍率がかなり高くなることが予想されています。スタジアムという非日常的な空間を、なるべく来たことのない人たちに味わってもらいたいです。

2018年7月27日、味の素スタジアムでのホームゲーム「明治安田生命J1リーグ第18節V・ファーレン長崎」で、冠マッチ「XFLAG Day」を開催。事前抽選で当選したモンストユーザー5000組1万名をホーム自由席に無料招待。夏祭りの演出で来場者を盛り上げた。


株式会社ミクシィ 木村こうき代表取締役社長執行役員

電気設備会社、携帯コンテンツ会社等を経て、2008年株式会社ミクシィに入社。ゲーム事業部にて「サンシャイン牧場」など多くのコミュニケーションゲームの運用コンサルティングを担当。その後モンスターストライクプロジェクトを立ち上げる。 2014年11月、当社執行役員就任。2015年6月、当社取締役就任。 2018年4月、当社執行役員スポーツ領域担当就任。(現任) 2018年6月、当社代表取締役就任。(現任)

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