「これ音良いよ」と気軽に言える
スペック的には普通だなあという第一印象だが、そこはさすがにB&O。NFMIが使えるということで、本気でチューニングにかかってきたのだろう。ワイドレンジで解像感もあり、シャープな定位と音場の広さは、今までなかったもの。この機種を選ぶ上での一番のポイントは、この音どう評価するかだろう。早速だが、同じNFMI機と比べてみよう。
まずEARIN M-2は、高域のレスポンスが弱い。そして音圧感はあるが輪郭のはっきりしない低域のおかげで、全体的にもっさりした印象を与える。この点でBeoplay E8に対して、かなり部が悪い。
Jabra Elite 65tは低域がマッチョ、かつ中音域の情報量もあって、Beoplay E8に対しては音の太さを感じる。が、よくよく聴き込むと、ボトムエンドのレスポンスが薄く、低域がやや腰高なおかげで、レンジが狭く感じてしまう。
ただ、JabraとB&O Playは、棲み分けができるように思う。ワイドレンジなB&O Playと、音の厚いJabra。どちらも傾向の違う音作りで成功している。そもそも5000円ほど安いJabraは、この設定でいいのではないか。そしてEARINはコンパクトにまとまったガジェットとしてのカッコ良さが身上だ。
Beoplay E8は「これ音良いよ」とサラッと言える、正統派のバランスを持ったイヤフォンだと思う。やっとトゥルーワイヤレスにもこういう機種が出てきたのかと、ちょっと感動すらしてしまった。
ちなみに、先のアプリには、XY座標をポイントして帯域バランスを調整する、ユニークなイコライザー機能が付いている。でも、イヤフォン本体のバランスが良いので、あまり使う場面もないのではないか。
装着性、操作性は並のレベル
逆に、並のレベルだと思えるのが装着安定性。特にスポーツモデルを散々やってきたJabraのElite 65tに比べると、形状も重量バランスもあっちは上手だなあ、と感じる。Beoplay E8は重心位置が耳穴よりずっと上にあるため、ちょっとしたはずみでズレやすいのだ。
ただ、付属のComplyのウレタン製イヤーピースで解消する。しかもイヤーピース素材のウレタンやノズルのフィルターが、高域成分を適当に吸収してくれる。ほかに比べて「若干ハイ上がりで、低域が薄い」と感じたらイコライザーよりも先に、Complyを試すべき。
もうひとつ並みレベルだと思うのが、操作がイヤフォン左右両側面のタッチセンサーなこと。EARIN M-2もそうだが、目視できない部分に反力のないタッチセンサーを使うのは、誤操作を招くのでやめた方がいいのではないか。センサー部分の外周にリングが付いているので、タッチ自体はしやすいのだが。
文句は以上2点のみ。Beoplay E8を試用してみて、もうNFMI非採用のトゥルーワイヤレスイヤフォンを積極的に選ぶ理由は、ほとんどなくなってしまったように感じた。今後はほかの大手も採用してくるだろうし、価格破壊的な中華製品も登場するだろう。もしかしたらB&O Playの天下も長くは続かないのかもしれないが、もしいま3万円をこのために使えるのなら、しばらくは後悔しなくて済むはず。
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四本 淑三(よつもと としみ)
北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。