外音導入トランスパレンシー機能
快適機能としては、オーディオトランスパレンシー機能もある。これは内蔵マイクで拾った音をイヤフォンにミックスすることで、人の呼びかけや、周囲の状況を察知しようというもの。
「外の音を聞きたければオープン型のイヤフォンでいいじゃん」というのも正しいが、密閉型は外に音が漏れにくく、低域のロスも少ない。その利点を保ったまま、外音を導入できれば最高なわけだ。
似たような機能はソニーの製品にもあり、リスナーの状態をスマートフォンが検知して外音の調整をするという凝った仕組みだが、こちらはずっとシンプル。設定できるのは、再生音にミックスする環境音の「音量」と「距離」。
この「距離」がなんなのかはちょっと面倒だが、近い音を大きく聞かせるか、遠い音を大きく聞かせるかの違い。具体的には、ノイズゲートとコンプレッサーを組み合わせた信号処理だ。
スライダーを遠距離にすると、環境音にコンプレッサーが効いてくる。だからノイズは増えるが、遠くの小さな音まで拾ってくれる。近距離側にするとノイズゲートが効いて、徐々にスレッショルドが上がっていく。すると近くの大きな音しか聞こえなくなる。
いずれもマイクで拾う音を大幅にローカットし、若干のディレイも加わっているので、スラップエコーのように聞こえるのがおもしろい。この効果のオン、オフはイヤフォン本体でも切り替えられるし、再生一時停止で自動でオンになる「オート」も選べる。
「AirPods」 or 「EARIN M-2」
以上、機能的には完璧だったが、文句の付けどころは2つある。ひとつはタッチセンサーの誤動作。装着時に耳へ押し込む際、タッチセンサーを触ってしまって、毎回音声アシスタントが起動してしまう。耳へ装着してから、センサーのスイッチが入るようにできないものか。
もうひとつは音。M-1と同じようにドライバーはバランスドアーマチュア一発だが、その割に高域は伸びず、低域がスッキリしないのもM-1と同じ。M-1発表時は、音質以前にフェージングの問題が大きくてどうでもいい話だったが、信号伝達系の精度が上がった今回は、オーディオ機器として一番肝心なここは気になる。
と言っても、ほかと比べて特別悪いわけではない。高域に関しては、イヤーチップである程度は解決できる。標準装着の低反発ウレタンは、遮音がいい代わりに高域を吸収してしまう。これをスペアのシリコンチップに交換すると、かなり改善される。低域に関してはブーミーというほどではないが、こもり気味。その帯域をアプリで絞れるようなればいいなと思う。
ただその程度のことは、フェージングやドロップのない再生音と、各種の快適性能が帳消しにしてくれる。
M-2の登場で、この種の製品マッピングもシンプルになった。トゥルーワイヤレスイヤフォンには2つしかない。NFMIとそれ以外、というわけである。
NFMIは、アップルのAirPodsも導入済みと言われるが、あちらはオープンエア型。利点もたくさんあるが、音は漏れるし遮音は悪い。密閉カナル型でNFMIを導入したEARIN M-2には、中華、大手含め、その他大勢のトゥルーワイヤレス機に対して大きなアドバンテージがある。実売3万円というのはいい値段だが、発売が遅れたからと言って、その価値はまったく目減りしていない。
■Amazon.co.jpで購入
四本 淑三(よつもと としみ)
北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。