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一般的なHDDとNAS用HDD『IronWolf』との違いが明らかに!主席技師に聞いたそのスゴさとは

RVセンサーにより振動が生じてもスループットを維持!

2018年06月22日 11時00分更新

文● 藤田忠 編集●ジサトラ ハッチ

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 NASでRAIDを構築する場合は、複数のドライブを連携して使うことを前提としている。そのために、振動、衝撃に対して高い信頼性が要求されると佐藤氏は言う。その信頼性、データの読み書きの正確性に応えるために同社がIronWolfの4TB以上のモデルに備えるRotational Vibration補正機能が、次に紹介される『RVセンサー』だ。

 佐藤氏によると「HDDにはSSDにはない機械的な制約がどうしてもあります。例えば、ディスクを読み書きするヘッドの動きに対して、逆方向の力が加わると制御系に負担がかかりパフォーマンスを低下させます。

 そういった影響を与えるドライブへの振動や衝撃を基板上に搭載する加速度センサーで捉え、ヘッドの動作にフィードバックし、センタリングキープすることで、安定した転送速度を確保しています」とのこと。

 さらに「実際の環境(NASの筐体など)ではプラスチックやアルミニウムといったフレームの材質と厚みによって振動や衝撃を受けやすいものと、そうでないものがあります。ドライブをフレームの底面または、不安定な上部といった取り付ける場所によっても、影響の度合いが変わります。

 また、RAID構成のNASでは隣のドライブから振動が伝播してくるケースもあります。そういったいかなる環境下でも、我々は『RVセンサー』を搭載することで、非常に安定したスループッドが保たれるようにしています」とのことだ。

RVセンサーの解説図。ドライブに影響を与える振動や衝撃を加速度センサーで捉え、ヘッド位置を補正することで、読み書きのエラーを防ぐ

 確かに最近ではPC、NASともにプラスチック製の固定フレームが増え、固定方法も多くがツールレスになっている。そう考えると、振動や衝撃をHDDに与えるシーンは多そうだ。実際、佐藤氏は「読み書きエラーが発生すると、再びヘッドが正しい読み取り位置(センターライン)に戻るまでに遅延(レイテンシー)が発生します。一般的な用途でのRVセンサーの効用としては、映像や音飛びがないといったことにつながって行く」と語っていた。このRVセンサーの搭載は大きなメリットと言える。

 ちなみに、以下が同社に特別に提供してもらったRVセンサーを備えているかいないかで、どれぐらいの差が出るのかを分かりやすく現した動画だ。

 RVセンサーの搭載、非塔載のHDDを同時に手に持ち揺らすことで、データ転送に遅延があるかないかを示している。RVセンサーを搭載した右側の画面では、データ転送を示す文字が止まることなくスムーズに流れている。一方、左側のRVセンサー非塔載のHDDは揺らした際に文字の流れが途絶えているのが確認できる。

データを一時保管する『Media Cache』で高速化とデータロスを最小限に

 IronWolfは信頼性だけでなく、データ転送の高速化を目指した技術『MediaCache』も備わっているという。

従来のHDDよりも高速化するための方法として、ユーザーからのデータをDRAMキャッシュから一旦『MediaCache』に保存し、後から一括してディスクに再配置することで書き込み効率を高めている

 MediaCacheは「ユーザーから来るランダムのアクセスを一旦この「MediaCache」の領域に保存し、後で本来あるべき場所に再配置していきます」という。

 HDDはプラッタと呼ばれる円盤状のディスクの外周から内周に向かって同芯円状に確保されている『トラック』内の『セクタ』という部分にデータを記録する。従来は逐一ヘッドが最外周、中央、最内周と移動してデータの読み書き処理を行なっていた。

 しかし、MediaCacheを使う際は、どういった情報がディスクのどの場所に再配置(最適化)されるかも記録されているため、ヘッドが移動するなどの機械的な動きを最小限に抑え、効率化を図っているそうだ。

 加えて、MediaCacheを使うことの2つ目のメリットとして、佐藤氏はデータの損失を防ぐことを挙げている。PCやNASの電源が切れた場合、データが失われたり、エラー障害により製品の交換、返品などが発生することもある。しかしながら、データをMediaCacheに一度保存しておけば、後から本来あるべき場所に再配置するため、データの損失はゼロとは言わないが、最低限に抑えることができるという。

 なお、このMediaCacheの延長線上には、Seagateが大容量化とともに採用を進めているディスク書き込み方式『SMR(Shingled Magnetic Recording)』(瓦書き方式)があるとのこと。SMRではひとつの塊を一括して読み書きし、部分的な変更時はキャッシュ内で更新したあとに、ひとつのブロックとして書き戻している。

 全体としてはXP時代に従来の512バイトから4096バイト(4K)にセクターサイズを拡張したAdvanced Formatから続いているテクノロジーになるという。延々と築いてきた技術を元にした高い開発力は、さすが世界初のHDDを世に出した老舗HDDメーカーと言えるだろう。