皆さんは、ハードディスク(HDD)についてどこまで知っているだろうか。PCやNASに搭載されているストレージ、SSDよりは遅いが容量単価が安いなど、基本的なことは知っていても、ブランドごとの違いや、最新機能のスゴさなどについては知らないことも多い。
たとえば、NAS用HDDは一般的なHDDとどれぐらい違うのだろうか。そんな違いについて詳しく知るには、実際にメーカーさんに聞くのが間違いない! そのため、今回はアスキー編集部のジサトラ ハッチが、日本シーゲイトに突撃取材を行ない、同社のNAS向けHDD『IronWolf』は、エントリーのHDDと何が違うのかを聞いてみた。
Seagate Technology(以下:Seagate)は、1979年の創業以来ストレージ技術の進歩を担ってきた老舗ストレージメーカーだ。プラッター容量の向上や技術更新に注力しており、現在販売中のHDDの中では最大容量となる12TBモデルをはじめ、用途に適した機能や技術を採用した製品のブランディングを展開している。
そんな一般的なデータ保存用のHDDよりも耐久性を高め、振動対策を施し、HDDの状態を詳しく診断、異常の検知、通知を行なう機能を備えるなど、データ保管に最適化されているNAS向けHDDが、今回のメインテーマとなっているIronWolfシリーズだ。
そんな、IronWolfシリーズの魅力はどこにあるのか、日本シーゲイトの技術本部技術部主席技師 佐藤之彦氏にお話しを伺った。
製品は1000時間/1000台動作で品質チェックを行なっている
今回お話をお聞きしたのは、日本シーゲイト 技術本部技術部主席技師 佐藤之彦氏だ。同氏は1981年にSeagateへ入社。ハードディスクを専門に扱い37年目で、ストレージ業界の栄枯盛衰を知るプロフェッショナルで、サーバー・ストレージメーカー、システムインテグレーターなどが、Seagate製HDDを導入するにあたり必要とする各種技術支援を提供するほか、秋葉原店頭や各種イベントで製品訴求活動に従事している。
まずは、人気となっているBarraCudaシリーズとの違いに関して改めて答えてもらった。「容量のラインナップとしては、ほぼ同じになりますが、NAS向けに調節されたドライブのIronWolfシリーズは、ファームウェア『AgileArray(アジャイルアレイ)』で、フィーチャリングされています」。
最大の違いとなるのが、搭載ファームウェアのAgileArrayになるわけだが、このAgileArrayはSeagateにおける「NAS向けドライブにチューニングされた機能の総称」とのこと。つまりは、後に詳しく解説された24時間365日稼働やRAID構築のサポート、用途の最適化など、NASで使う際に必要な技術や機能を網羅したファームウェア名というわけだ。
また、佐藤氏いわくBarraCudaとIronWolfシリーズではつくりが異なり、コンポーネントパーツの品質やつくり込みなどのグレードに差があるという。
そうしたつくりの違いについて佐藤氏は「あくまで一例ですが、分かりやすいのがHDDのトップカバーです。ただの蓋と思うかもしれませんが、グレードが違うと剛性や耐性はまったく異なってきます。同じように、ディスクの厚みや、ヘッドの浮上量、駆動部の動きやすさといった部分のマージンは、信頼性が求められる製品ほど、余裕を持たせています」とのこと。
剛性や信頼性の違いについては、Seagateが実際に行なったテストの何らかの数値を元にしているのか、聞いてみたところ「一般のお客様にどういったテストを行なっているかは公表しておりませんが、当然、信頼性のテストを実施しています。
我々は、ひとつの製品を出すために、本当に要求仕様を満たしているか実際に1000時間/1000台動作させる『ReliabilityDemonstrationTest』(信頼性実証試験)を行ない、不良率がスペックで保証している0.7%に入っているかどうかなどを見ています。また、OEMメーカー様には、信頼性のテストで得たエビデンスを必ず提示して、裏付けを持って訴求していますのでご安心ください」との回答を得られた。
1000時間/1000台によるテストに加え、高い作業負荷に耐えられる製造を行なったうえでの耐久性と信頼度はIronWolfで3年間、IronWolf Proでは5年間という保証期間にそのまま現れている。