賛否両論があるブロックチェーンベースの暗号通貨を信奉者はどう捉えているのだろうか。米国と英国で開催されたブロックチェーン関連カンファレンスに記者を送り込み、「大金持ちになりそこねた人」や「家を買った人」に直接話を聞いてみた。
ブロックチェーンの信奉者が熱狂するのはなぜだろうか?ブロックチェーンは金持ちになったり、何かをもっと大きくしたりするための手段なのだろうか? どうもそれがピンと来ない人々に一体どのように説明したらよいのだろうか? そんな疑問への答えを知るために、MITテクノロジーレビューはテキサス州ダラスと英国ケンブリッジで開催されたブロックチェーン・カンファンレンスの会場に記者とカメラマンを派遣した。
「ブロックチェーンについて説明するのはやめて、どんな利点があるかを示す努力を始めるべきです。なぜなら、消費者はそれがどのような仕組みなのかを実際に知る必要はないからです。人々は、消費者はVisaカードや財務省といったものがどのように機能しているのか分からなくても、人生に価値をもたらすことを知っています」(アーリ・ロトフィプア、33才、ダラス)
「インターネットも実際、同じアイデアで始まりました。情報の共有や発言、小さなアイデアを育てて大きくできる場を整備する自由を求めたのです。起こっていることは、まったく同じです。また繰り返すだけです」(クリス・ニコルズ、 47才、ダラス)
「ビットコインが3セントだった数年前、私は忙しくてビットコインを買えませんでした。買えと言われ続けて、私も買うと言い続けたのに、買い忘れてしまったのです。そして、ある時、ビットコインが1万9000ドルになっていることに気付きました。もしビットコインを持っていたら、すぐにでも売るところですが、持っていませんでした。自分をののしりたい気分でした。何百万ドルも手にしていたかもしれないのに」(マイケル・ミューレン、50代、ダラス)
——あなたは暗号通貨について友達にどのように話していますか?
「友人たちはこんな風に言いました。『全額投資したって?』『頭おかしいんじゃない?』。でも今では皆、私に助言を求めて電話してきます。」
——お金持ちになったのですか?
「ええ、なりました。故郷のクロアチアに家を買いました。」
(ペーター・ユーシェック、23才、英国)
「インターネットは、私たちが不可能だと思っていたツイッターのようなアプリケーションを可能にしました。まさに青天の霹靂(へきれき)です。インターネットがコミュニケーションに革命を起こしたのと同じように、ブロックチェーンは信用に革命をもたらすでしょう。今や、機関や政府に代わるものがあるのです。 私たちはシステム全体を考え直せます」(ジャスティン・ドレイク、29才、英国)
「ブロックチェーンを通じて、誰もがグローバルIDを持つことになります。すなわち、匿名で暗号化された独自のゲノムを持つことになるのです。暗号鍵を使えば、自分のゲノムにアクセスする人を完全に管理できます。寄付をしたり、現金化したりできますが、そういったことすべて自分で管理することになるでしょう」 (ヘンリー・アイネス、43才、ダラス)
——この先10年後、20年後には、暗号通貨はどうなっていると思いますか?
「もしその質問に答えられたら、その答えは私の人生の中で最もでたらめな答えになるでしょう」
——なるほど。
「1997年の私がインターネットは何のためにあるのかと尋ねられたら、電子メールを送れるし、おっぱいの画像をダウンロードできると答えるでしょう。今では携帯電話でインターネットに接続すれば、ボタンにタッチしたりスワイプしたりして、たくさんのバカげたことをいつでもできます。こうした未来の繰り返しがどのような形をとるのかは、わかりません。私は、人々がこれまで以上に財政的な主権と管理能力を持てたらいいと思います。もっと自由で、もっとボーダレスで、もっと検閲に抵抗できる世界へと導いてくれることを期待しています」(アンバー D. スコット、39才、ダラス)
「インドでは、多くの闇市場で取引が実施されています。台帳が決して改ざんされないブロックチェーンは、安全だと思います。ですから、私が目の当たりにしているような闇市場での取引を知っている人は、今後はそれが非常に難しくなり、いずれは根絶されるかもしれないと考えています。 実に素晴らしいことです」(アシュケイ・シャー、21才、英国)
「6カ月前、私のインクトイン(LinkedIn)のフィードには、ブロックチェーンや暗号についての会話はあまり多くはありませんでした。3カ月前に増え始めました。今では、私のニュースフィードの75%は、暗号とブロックチェーン、そして誰が何をしているかについての話題です」(ジョン・ノルツ、44才、ダラス)
「数年前に参加したハッカソンで、参加者たちは、アフリカとインドの当局が戸籍を与えていない2億3000万人の子どもたちに身元証を与える方法を模索していました。私たちのチームが思いついたアイデアは、子供の写真を撮り、毎年指紋を取ってブロックチェーンに保管し、18歳になったらデジタルの身分証を与えるというものでした」(クリスティアーナ・イマフィドン、24才、英国)
——あなたは暗号通貨を何か購入しますか?
「いいえ。だって、私は競馬はしないのです。馬が勝たなければ、何も得るものはありませんから。暗号通貨も同じことです。失敗したら、何も得るものはありません!」 (ジョン・ゴールドワース、89才、英国)
「政治と経済において国境が消失し始めるのを見ることになるでしょう。はっきりわかります(中略)もう、管理者の指図を受けずにすむのです」 (エリザベス・ムンカー、28才、英国)
——あなたのおばあちゃんにブロックチェーンをどのように説明しますか?
「こう言うでしょう。『おばあちゃんのクレジットカードは今どうなってる? クレジットカードが携帯電話に入っていると考えてみてよ』。 」(トレック、38才、ダラス)