このページの本文へ

パペット制作リーダーのアンディ・ジェント氏にこだわりを聞いた

1日の撮影で2秒! ストップモーションアニメ『犬ヶ島』のパペットのこだわりがスゴイ

2018年05月24日 09時00分更新

文● 八尋/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

『犬ヶ島』

 近未来の日本を舞台にしたストップモーションアニメーション『犬ヶ島』が5月25日より全国公開される。「ファンタスティック Mr.FOX」「グランド・ブダペスト・ホテル」のウェス・アンダーソン監督作品で、第68回ベルリン国際映画祭の最優秀監督賞【銀熊賞】を受賞した注目作だ。

 近未来の日本「メガ崎市」で犬インフルエンザが大流行し、人間への感染を恐れた小林市長が、すべての犬を“犬ヶ島”に追放する。ある時、市長の養子で孤児のアタリがたった1人で小型飛行機に乗り込み、愛犬で親友のスポッツを救うために犬ヶ島へ上陸する。島で出会った5匹の犬たちを新たな相棒とし、スポッツの探索を始めたアタリは、メガ崎の未来を左右する大人たちの陰謀へと近づいていく。

舞台は近未来の日本

 舞台以外にも、日本大好きというウェス・アンダーソン監督ならではの日本の要素がふんだんに採用されている。その1つが音楽で、和太鼓を中心とした音楽はとてもユニーク。また、黒澤 明監督から多くの影響を受けた作品でもあり、明監督へのオマージュではないか? という部分が多く登場。音楽でも、黒澤監督の「七人の侍」(勘兵衛と勝四郎~菊千代のマンボ)や、「酔いどれ天使」(小雨の丘)などの曲が使用されている。

 そのほか、豪華キャスト陣も要注目。美しい毛並みを保っているミステリアスな美女犬のナツメグをスカーレット・ヨハンソン、高校野球の最強チームの元マスコット犬のボスをビル・マーレイが担当。加えて、科学者助手ヨーコ・オノにそのままオノ・ヨーコ、筆頭執刀医に渡辺 謙、ニュースキャスターにRADWIMPSの野田 洋次郎、おばさんに夏木 マリなど、日本のキャストも多く出演している。

 そして、本作で個人的に1番魅力的だと感じたのが、パペット。ストップモーションならではのぎこちない動きで、かつパペットの可愛らしさはあるものの、目や口の動きはとてもリアルで、「これ、制作や撮影にどれだけの時間かかってるんだ?」と思うシーンが多くみられた。

 そこで今回は、5月19日から27日まで東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催中の『犬ヶ島』展を手掛けるために来日していた、本作のパペット制作リーダーのアンディ・ジェント氏に制作の裏側などを聞いてきた。

パペット制作リーダーのアンディ・ジェント氏にインタビュー

犬がしゃべっていて違和感のないよう
顔の筋肉が動いて表情が作れるように制作

アンディ・ジェント氏

ーー本作で登場するパペットは、かわいらしさを残しつつとてもリアルな動きをするなと感じました。パペットを制作するうえで重要視したことがあれば教えてください。

アンディ・ジェント氏:(以下、アンディ)前提として、監督が気に入ってくれるキャラクターを作らなくてはいけません。そのうえで、物語での役割をしっかりと醸し出せるルックスにしようと心がけました。また、いかにちゃんと動いているか、アニメーターが演技を付けられる機動性を持っているかなどを考えながら制作しました。

ーーパペットの動きで、ここに注目してほしい、ここに注目したらもっと楽しめるというポイントがあれば教えてください。

アンディ:犬のパペットはリアルな歩き方や動きなどができるように作っていますが、あえてちょこちょこと動くようにもしました。後、犬がしゃべっていて違和感のないようにするのはとても苦労したので、その部分には注目してほしいですね。

本作に登場する犬はどれもチャーミングでかつ表情がリアル

犬だけでなく主人公のアタリをはじめとした人間たちも表情豊かで個性的

ーー確かに、最初は犬がしゃべるんだなとちょっとは思いましたが、観ている間に違和感がなくなっていきました!

アンディ:人間のパペットは顔を変えられるようにしていましたが、犬の顔はメカニカルに動き、表情をつくれるようになっています。例えば、「I Bite」というセリフの「Bi」は顔のどの部分の筋肉を使っているかを確認して、動かして撮っていきました。なるべく自然に違和感がなくなっていくようにしたので、 そう感じてくれたのであればうれしいです。

1日で撮影できるのは1チーム約2秒! 膨大な時間をかけて出来上がった作品

ーーその作業、とてつもない時間がかかると思うのですが……。

アンディ:そうですね。1週間で1分の映像が撮影できればいい方で、だいたい88週くらいで撮り終えたかな。チームごとで作業は分かれていましたが、1チームで1日に撮影できるのはだいたい2秒くらいでしたね。

パペットだけでなく、もちろんセットも細かく作りこまれている

ーー2秒!! それだけ大変な作業だと、完成後のうれしさもひとしおだと思うのですが、アンディさんが一番うれしかったのは、パペットがすべて完成したときですか? それとも完成した映画を観終わったときですか? はたまたパペットが最初に動いたときですか?

アンディ:日本での公開もまだなので、自分の中ではまだ終わっていないという思いがありますので、1番かどうかはまだわかりませんが、この映画が作られるよという電話を受けたときと、チーフがしゃべったのを観たときは、かなりうれしかったです。

ーーでは、一番お気に入りのパペットは、チーフということでしょうか?

アンディ:パペットが気を悪くしてイタズラするかもしれないから、1番好きとかは言わないようにしているんだ(笑)。なんでチーフの話を出したかというと、一番最初にパペットが動く姿を観たのがチーフとアタリだったからです。犬ヶ島はチーフとアタリの関係から物語が発展していくので、思い入れはありますね。あと、夏木マリさんが声を担当したおばさんもお気に入りです。

ーー最後に、『犬ヶ島』展の見所を教えてください。

アンディ:実際に映画で使用したセットとパペットを展示していて、カメラが設置された場所に立って、アニメーターと同じ視点を楽しむことができます。『犬ヶ島』の舞台裏をVRで観ることができる動画を公開していますので、それを観てから展示に来てもらえると、さらに楽しめると思いますよ!

ーーありがとうございました。

 5月25日より全国公開の『犬ヶ島』。今回、パペットへの半端のないこだわりの鱗片を聞くことができた。膨大な時間が掛かったストップモーションアニメの力作、ぜひ劇場に足を運んで、パペットが動き回る姿をその目で確認してみてほしい。

作品情報

作品名:『犬ヶ島』
公開日:5月25日(金)全国ロードショー
配給:20世紀FOX映画

■関連サイト

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ