エミライは、米のオーディオメーカーMYTEK Digitalの新製品「Brooklyn DAC+」および「Liberty DAC」に関する説明会を開催。5月1日より、エミライが国内で取り扱いを始めることを発表し、製品の詳細を説明した。
MYTEK Digitalは元々、主にレコーディングスタジオで導入されるプロ向けの機器を開発、製造していたメーカー。
2011年よりコンシューマー向けの製品もリリースしている。当時の新製品をプロのエンジニアに試用してもらったところ「オーディオマニアに聴かせてみたらどうか」と提案され、実際に試してもらったところ、いい反応が得られたため、「Stereo192-DSD DAC」で一般市場にも参入したという。Stereo192-DSD DACはDSD音源をデコードできる世界初の製品だったとする。
現在もレコーディングスタジオ向けに販売しており、A/DコンバーターやD/Aコンバーターを主力製品としている。
Brooklyn DAC+
Brooklyn DAC+は、ESS TechnologyのDACチップ「ES9028PRO」を採用したDAC。
最大で、PCMは384kHz/32bitまで、DSDは11.2MHzまでのネイティブ再生に対応。また、MQAフォーマットの音源の再生にも対応する。
マスタークロックには、水晶発振器「Femto Clock」を用いた「MYTEK フェムトクロック・ジェネレーター」(内部ジッター0.82ps)を搭載。ヘッドフォンアンプ部はRCAだけでなく、XLRのバランス出力にも対応している。入力はUSB 2.0、XLRステレオミニ、同軸デジタル×2、光デジタルに対応。
既存モデル「Brooklyn DAC」のアップグレード版で、DACチップの違いのほか、アナログ信号経路はデュアルモノラル構成で搭載し、より高品質のアナログアッテネータ回路を搭載した点が特徴。
サイズは幅216×奥行き216×高さ44mm、重量は2kg。
Liberty DAC
「Liberty DAC」はBrooklyn DACの兄弟モデルで、コンパクトな筐体が特徴のDAC。
DACチップにはESS Technologyの「ES9018K2M」を採用し、再生可能フォーマットはBrooklyn DAC+に準ずる。マスタークロック性能は10psの回路を搭載。入力はXLRステレオミニ、同軸デジタル×2、光デジタルに対応。
サイズは幅140×奥行き216×高さ44mm、重量はおよそ1.5kg。
Clef
同社では初めてのポータブルオーディオ製品となる「Clef」も展示された。
参考機となるが、最大で384kHz/32bit、DSD 5.6MHzまでの再生に対応するDACチップを搭載。DAC内蔵ポータブルアンプとしてだけでなく、Bluetooth経由での入力にも対応する予定。Bluetoothのコーデックは、aptX、aptX HDに対応。また、LDACへの対応も検討している。
本記事で紹介した製品の価格と発売時期は、現時点で未定。エミライによれば、「BrooklynDAC+」は30万円弱、「Liberty DAC」は15万円弱を見込んでおり、5月中に発売したいとのこと。
スタジオの音を熟知しているから、作れる製品
創業者のミーハウ・ユーレビッチ氏は、かつてレコーディングスタジオで機器関連のエンジニアを担当。レコーディングエンジニアやマスタリングエンジニアの要望に合わせて、スタジオ用機器のチューンナップやカスタマイズを手がけていた。
現在もエンジニアたちと交流が深く、「常に現場の声を聞きながら製品開発に反映している」と説明。また、A/Dコンバーターを長年開発してきた歴史から、「本当のスタジオのサウンドを再現するには、アナログからデジタルへ変換した際と逆のことをしないと、難しい。MYTEK DigitalはA/Dコンバーターに精通しているから、D/Aコンバーターでは、まさにその反対のことをしている。だから本物の音を再現できる」と解説。
記者からは「どこが一番の強みなのか? 製品の一番の魅力はどこになるか?」との質問もあがったが、「搭載するパーツや設計、チューニングや筐体など、すべての要素がMYTEK Digitalの音には重要。すべては要素であり、それらの組み合わせ方、バランスの取り方でこの音を実現している」とした。
製品の仕様には直接関係ないが、追記しておきたい。創業者のミーハウ・ユーレビッチ氏は一見寡黙だが、製品について語り始めると饒舌になり、製品に対する情熱の強さが伺え、また自身の経歴があってこそ生み出せる製品にも大きな自信を持っていると感じた。Brooklyn DAC+を視聴したところ、ソースを正確に再現する能力に秀でており、「低域の迫力」や「きらびやかな高域」といったワードで語られるオーディオ機器とは異なるベクトル=メーカーの色付けや特徴などを推すのではなく、ソースの再現性能を重視し、音源に収録されている空気感を活かす思想が見え、非常に新鮮に感じた。オーディオファンには、ぜひ試してほしい製品だ。
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