「ペヤング すっぱからMAXやきそば」
4月16日発売(コンビニエンスストア先行)
実売価格200円前後
まるか食品
http://www.peyoung.co.jp/products/962/
サイバーパンクなカップやきそばを
見つけてしまった
西暦21××年。重金属汚染が進んだ都市の一角。人々は降り注ぐ酸性雨の下、雑然としたビル街の隙間を縫うように歩く。遠くにはネオンの看板で「ピーヤング」「もっともっと激辛」などのメッセージが表示され、薄暗い空の中で、まぶしいほどの原色の光がきらめいている。
この街に古くからある飲食店「まるか」のカウンターに腰掛けた男は、ハットを深く被り、すこし汚れたトレンチコートを羽織っていた。店主は注文も聞かずにプラスチックの器を置いた。そこにはちぢれた赤い麺と、小さな甲殻類の身と、いくつかの緑色の葉物が乗っているのだった――。
ごめんなさい、いきなり何の話かと思うかもしれませんが、そんなことを考えてしまうサイバーパンクな味だったのです。まるか食品が4月16日からコンビニエンスストア先行で発売している「ペヤング すっぱからMAXやきそば」。価格は200円前後。
カップやきそばでおなじみの「ペヤング」ブランドの新作。「すっぱさ」と「からさ」、2つの衝撃を同時に楽しめるといいます。かやくはキャベツ、えび、ニラ、ピーマン。527kcal。内容量は112g。
ポイントはかやくとソース。いつものペヤングとは違います。かやくはキャベツ、えび、ニラ、ピーマン。このあたり、まるか食品が発売しているアジア・エスニック料理風味の「ピーヤング」シリーズを思わせるところもあります。ソースは少しとろりとしていて、赤いのです。茶色でさらさらしたおなじみのものではありません。
ソースの色が赤く、そして匂いが(写真では伝わらなくて残念なのですが)強烈にすっぱい。鼻腔を刺激する香りです。えびやニラが入っているせいもあって、アジア料理のようなムードがある、といってもおおげさではないでしょう。
「すっぱい!」「辛い!」しかない人工的すぎる味
味ですが……なんですかね、これ。まずい、とはちょっと違うんですよ。
とにかく、すっぱからMAXという名前の通りなんです。口に入れると、ほんとうにすっぱい。「うおっ」と驚くぐらい。そして、あとから辛さが一気にくる。まるか食品の「ペヤング 激辛MAX」に似た、舌を刺す愛想のない辛味です。喉までヒリヒリします。
サイバーパンク的と表現したのは、なんというか、「さまざまな味が絡み合ったすっぱさ」「香辛料による奥深い辛さ」のようなものがないからです。「すっぱい!」「辛い!」以上、終わり……みたいなシンプルな刺激しかない。ペヤング特有の、ムギュムギュした食感の麺と、こまかいサイズ感の具材が、ますますその気分を加速させます。「人工的なもの」を食べている感じがとても強いのです。
悪く表現すれば、奥行きがないというか、コクがないテイストといえるかもしれません。逆にいうと、とにかくすっぱさと辛さだけが「ドーン!」と目立つので、ちょっと他に類を見ないジャンキーな雰囲気があります。市場に似たようなものがあるかと言われると、パッと思いつかない。
しかし、たまたま、筆者がそういう味に感じただけかもしれません。今回は家電担当の盛田さんと、動画班のサンキュー鈴木さんにも食べてもらうことにしました。
盛田さん「最初はすっぱくて、後から辛い。でもなんだろうな。類するものを食べたことがないぞ。200年後ぐらいに文明が崩壊した世界で『むかし地球にはアジアという地域があり、そこでは麺料理が食べられていたそうだ』と学者が再現した食べ物という感じ。あえて例えると……よっちゃんイカにラー油かけると、こんな味になるかもしれない。ハマる人はめっちゃハマる可能性がないとは言い切れない」
サンキュー鈴木「ごめんなさい、個人的な感想ですが、キツめの評価をしていいですか。5点満点で0.5点。辛いしすっぱいのはわかりますよ。そこは嘘をついていない。でも、おいしいと思える要素がない。食べられないことはないけど、あえてこれを選ぶ決め手がないという感じです。だったら普通のペヤング食べますよ。うーん、辛口すぎますかね?」
まるか食品はよくもわるくも極端というか、「大盛り? じゃあ2倍にすればいいや」「激辛? じゃあめちゃくちゃ辛くすればいいや」という姿勢のメーカーです。すっぱからMAXやきそばにもその発送は端的にあらわれています。問答無用にすっぱくてからいです。そのほかはバッサリと切り捨てるいさぎよささえ感じられます。
「ピーヤング」シリーズが、カップやきそばの枠の中でエスニック料理の味をつくろうとした(のだと思う)のに対して、すっぱからMAXやきそばは国や文化などに興味がなくなった未来人の味といえるかもしれません。「すっぱくて辛いものをいっぱい入れればいいんだ」と判断しておどろくほど酸味と辛味を入れたような、サイバーパンク麺です。
正直に言えば、万人にオススメできるものではないです。でも、「もう、唯一無二だろうな」と思わせる何かはあります。怖いもの見たさと表現したら下世話かもしれませんが、いま食べておかないと、人生でもう味わえないであろう何かを感じました。おいしいかはともかく、すごいカップやきそばです。
――そして、麺を平らげた男は考えた。アジア諸国において、21世紀、このような食べ物があり、そこに住む人びとは毎日のように食べていたのだろうと。人工的な酸味と辛味がまだ口の中に残っている。好き嫌いが分かれそうではあるが、人によっては、無性にほしくなる味かもしれない。ふと窓に視線を向けると、黒い空を我が物顔で飛び回る、広報用の企業飛行船が遠くに見えた。船体にそなえ付けられたスピーカーから、無機質な音声が流れ続けている。「顔は四角でも味はまろやか。ペアでヤング、ペアでヤング」……
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!
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