筆者はフリーランスで仕事を続けており、現在米国に住んでいることもあって、毎週対面の定例ミーティングが設定されることはほとんどありません。それでも東京にいた頃は、いろいろな打ち合わせが必ず週に5回は入っていました。
これは今だから明かしますが、実は打ち合わせのスケジュールはなるべく週の後半にまとめようとしていました。原稿を書く仕事をしていると、筆者としては週の前半の方がはかどる傾向があったからです。
打ち合わせはだいたい1時間単位で設定され、情報の伝達と確認が中心であることが多いです。何かその場で考えて決めようという会議の場合、もう少し長い時間が設定され、話し合われたことは持ち帰って検討しあい、次週まとめるという流れが多いのではないでしょうか。
そんな「会議」の経験が染みついていると、目の前で6人前後のグループの高校生が、ある過疎化が進む街の未来を救う提言を、たった20分で議論してまとめてプレゼンテーションにこぎ着ける様子には本当に驚かされるばかりです。
高校生による2つのシリコンバレー研修
3月25日夕方、日本のデジタルガレージがサンフランシスコで運営するコワーキングスペース「DG717」に、日本から来た中学生・高校生26人が参加する合同アイディアソンが開かれました。2年ぶり、2回目となるイベントには、前回から引き続き、San Francisco在住の外村仁さんが企画しました。
今回企画に参加した神奈川県にある聖光学院の生徒20人と、熊本県人吉市からきた生徒6人は、それぞれ同時期に、別々のシリコンバレー研修でサンフランシスコを訪れていました。
聖光学院の研修は、起業家精神やリーダーシップを学ぶことと海外の大学視察が目的。中高一貫で大学受験を目指す進学校にとって、海外の大学という選択肢はこれまではなく、4年前のシリコンバレー研修以降、研修参加者を中心に海外大学を志望する生徒が出始め、学校側もサポート体制を急いで整えたそうです。
また熊本県人吉市の研修は、同市出身の医師、一井正典氏の足取りを訪ねることを通じて、グローバルな人材としての成長を遂げることがテーマでした。
幕末に生まれた一井氏は、上京後、サンフランシスコに渡って医師に師事し、東海岸のフィラデルフィア・デンタルカレッジを首席で卒業後、日本人初の米国での開業歯科医となり、また大学教授、米国歯科医師会会員になったのも日本人初という人物です。日本に帰国後は、東京・神田で歯科医を開業し、明治・大正・昭和の3人の天皇や皇族の侍医まで務めました。
人吉市は年間400人の若者が進学や就職などのために街を出て行くという高齢化が急速に進行する地域でもあり、2年に一度の若者の育成事業に乗り出し、今年でシリコンバレー研修は3回目。前回の研修の際、聖光学院とのアイディアソンに初めて参加し、互いの生徒が「全ての行事の中で最も印象に残った」と語っていたことから、2年ぶりに2回目のコラボレーションが実現しました。
議論しながらアウトプットを作る
今回、生徒たちは6つの混合チームに分かれ、聖光学院がある横浜か、あるいは人吉の問題を解決するアイディアをチームごとに出すアイディアソンが展開されました。全チームが人吉での問題解決を選択しましたが、そのあとの非常に時間が限られており、議論してアイディアを考え、発表としてまとめるまでの時間はたった20分。
しかし蓋を開けてみれば、ほぼ全チームがスライドを用意し、しかも実際に実行に移せそうなアイディアをまとめ上げていたことに驚きました。
議論の様子を見ていると、テクノロジーとコミュニケーションの巧みさが光ります。
あるグループでは、議論の流れをそのままプレゼンのストーリーとして採用し、話が決まったら6人がそれぞれ紙に自分が担当するパートを書き出していきます。それを一人の人がスマートフォンで順番に写真を撮っていき、その写真をスマホの中に入っている「Googleスライド」アプリに貼り付けていきます。
こうしてできた紙芝居のスライドを、こんどはChromebookに同期されたGoogleスライドの文書を編集していき、発表に使うスライドを完成させていったのです。その脇では、アイディアに説得力を持たせるための統計の数字をスマホで検索したり、関連する写真を探してきたり、分業しながらものすごい勢いでスライドが完成していく様子には、興奮すら覚えました。
初めて会った人同士で議論をし、テクノロジーを駆使して目的への最短ルートで走りきる。そんなパワーを存分に発揮できる若者たちを頼もしく感じたのです。
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