日本市場に参入したばかりのスマートフォンメーカー「OPPO」は、日本のメディア向けにプレスツアーを開催し、中国にある本社および工場を公開した。2011年にスマートフォンを発売してから、世界市場でシェア4位と急成長のOPPO。本社と工場からその急成長の秘密が垣間見えた。
東莞の工場は約7000人が生活する街
今回見学した工場は、中国広東省東莞にあり、深センの隣。本社機能は深センに別途オフィスを構えているが、登記上の本社は今回見学した東莞の工場にあるとのこと。敷地面積は22万平方メートルで、中国全土約3万人の社員のうち、1万人がこの工場に就労している。OPPOには中国本土の4つを含め世界中に7つの工場があるが、そのなかでも最大規模なのがこの工場だ。
今回のプレスツアーで公開された工場機能は、スマートフォンの基板を生産するSMTセンター。さらに製造した製品の各種テストを実施するQEラボの2つ。そのほか各種部品を組み合わせて製品を完成させる組み立てラインなどもあるが、今回は最新モデルを組み立て中とのことで、見学はできなかった。
SMTセンターは、スマートフォンの核となるプリント基板を製造するライン。ほとんどが自動化されており、1つのラインに配置されている人数は数名ほど。チップセットなどの部品はリール状にセットされ自動で取り付けが行なわれる。
筆者も何度か日本メーカーの工場を見学したことがあるが、こういったプリント基板を製造するラインは、どのメーカーもだいたい同じ。ロボットなどが導入され、極力人を減らして生産性を高める工夫がなされている。
もう一方のQEラボは、生産ではなく完成した製品の耐久性などをチェックするための施設。同じ製品のうち3万台のうち100台をピックアップして、各種耐久性のテストが行なわれる。このQEラボではSMTセンターと同じように機械も使われているが、人海戦術の作業も多く行なわれている。たとえば落下テストは専用の機械を使って合計4万8000回の落下テストを実施する。
一方でそのダメージチェックなどは手作業で行なわれ、どのあたりが壊れやすいのかなどを目視で確認している。またテストでもドライヤーのような機械を使ったり、SIMを挿し変えて通信性能をチェックしたりといった作業は人力のため、多くの人が配置されていた。
これらの作業に加えて、組み立てラインなどもあり、総勢1万人の社員が働いている。工場は社員寮も完備しており、7棟で約7000人の社員が生活をしている。さらに、昼食も2000人が同時に食事をとれる食堂が用意されており、社員証で支払いが可能。ほかにはバスケットコートやサッカー場、体育館、図書室なども完備して、工場全体で1つの街とも言える規模だ。
こういった工場は日本人にはなじみのある風景だが、自社で生産拠点を持っている企業は日本では少なくなってきている。ちなみに筆者の地元は日立や日産の工場が近く、自宅近所には日立や日産に勤める工員の寮があちこちにあった。ただしそれは30年ほど前の話で、現在は閉鎖された工場も多く、寮だった場所はマンションなどに変わっている。
さらに言えば、中国メーカーすら自社生産ではなくOEMを使った企業は少なくない。OPPOの担当者は「自社で工場を持ち、OEMを一切使用せずに100%自社製を貫いている」と語っていた。それゆえ、カメラに特化したスマートフォンを高品質な状態で送り出せているわけだが、筆者の目には30年前の日本メーカーのような印象を受けた。