インターナショナルなJAWS DAYS 2018で聞いた極上のエンジニアトーク
“Learn and Be Curious”- AWSエバンジェリスト対談が教えてくれたもの
2018年03月27日 10時30分更新
10年後も通用するエンジニアの条件
興味深い質問の1つに、「5年後、10年後もITの専門家として先端を走るにはどんな勉強が必要か」というのがあった(ハント氏「Python!」)。
「未だコードを書くなど現役感バリバリですごい」とヤン氏が賞賛するバー氏は、自身が20歳くらいの頃、少し年上のエンジニアたちがある世代の技術や言語、システムに固執するあまり、新技術が台頭しても「ちょっとシンプルすぎやしないか」「アップデートを繰り返して改善された既存の技術ほどじゃない」など、これもできない、あれもできないとシャットアウト。30代、40代になる頃には過去ばかり語る、時代遅れの存在になっていたと振り返る。
「私たちエバンジェリストたちは、少し先の未来に生きなければならない。十分動かないものについても理解しようと努力し、その技術が進む方向を見定める。エンジニアも同様だ。過去よりも未来を見てほしい。いま目の前にある第1世代のテクノロジーのうち、どれが使えるようになるのか、今後どうなるかを想像し、これだと心に思うものがあれば、うまく展開できるよう支えてほしい」(バー氏)
そのためにも、今起きていることにも目を向けてほしいとフェイルマン氏は言う。「2012年当時、機械学習がここまで進化し、業界に大きなテクノロジーシフトを巻き起こしているなんて予測できなかったと思う」。ハント氏も賛同し、「re:Invent 2014でAWS Lambdaが発表されたとき、会場の半数は「なんだコレ」「どうでもいい」「次の発表は何」と反応したけど、残り半数は「これは世界を変える」と直感した。実際、後者が正しかったんだけど、たとえばAmazon DynamoDB、Aurora Multi Masterなど、目の前の基本的な進化をきちんとフォローすることはとても有意義なことで、5年後、10年後の自分を支えてくれると思う」と述べた。
もっとも、せっかく勉強したのに、次の進化でそれが無駄に終わったときのショックも大きい。
亀田氏は、「あるエンジニアからの質問で、EC2上にKubernetes環境を構築するため、勉強に膨大の時間を費やした。なのに、それから2か月もしないうちに、re:Invent 2017でAWS FargateやAmazon ECS for Kubernetesが発表された。クラウドは怖いと思うようになり、今後も同じことが起きないかと不安があるそうだ」と投げかけた。
これにヤン氏はなかなか難しい質問としながら、「発表以前からkubernetesの60%以上がEC2上で稼働しており、それで自組織のビジネス課題が解決するなら、そのまま運用を続ければいい。選択肢が増えただけで、不安に感じることはない」と断言した。バー氏も「プラットフォームが深度の増す過程で、こうした状況が発生するのは自然なこと。これまで取り組んできた内容と部分的に重なる上位レイヤーのサービスが提供されても、基盤となる知識が不要になることはない。新たにAWSに乗っかった機能を使いこなすためのベースの知識があるわけだし」と述べた。
次のリージョンは火星? 注目のITトレンドを語る
もう1つ面白かったのは、エバンジェリストがいま注目するITトレンドを語った場面だ。ハント氏は「暗号通過はアレ過ぎるから、ぜひ衛星や宇宙開発に注目してほしい。次のリージョンは火星になるかもしれないし!」と大好きな宇宙話にひとり興奮。ヤン氏は「韓国はバズワードがいっぱいで、今はマイクロサービス、DevOps、AIかなぁ」と考えながら、「次のトレンドを捉えるには、やはり手を動かすのが一番」とした。また、AWSのリソースはリージョンによって異なり、他のリージョンにマイグレーションするのは結構難しかったが、昨年の発表でAmazon Dynamo DB Global Tables、Aurora Multi Master、Inter Region VPC Peeringなどが整備され、グローバル展開しやすくなったことに言及。「こうしたAWSのトレンドもぜひ追いたい」と挙げた。
バー氏もデータベースについて、Serveless AuroraやRedshift Spectrumなどのプロジェクトを紹介。必要なタイミングで大量の処理能力を割り当てるサーバレスデータベースへの進化や、進化に合わせて登場したS3 SelectやRetrospectrumといったツールを解説。こうしたトレンドも熱いと述べた。
このほか、各国AWSコミュニティの違いや自慢話で盛り上がった。ヤン氏はJAWSのLTで時間オーバーの人にパイが投げられるのが衝撃的だったと笑い、フェイルマン氏はブラジルのイベントでは景品にIoT自転車やポップコーンマシンがあってパーティも最高だからぜひ来てとアピール。会場の笑いも絶えなかった。
最後にコメントを求められたバー氏は、2010年に初めてJAWSミーティングに参加したときのことをこう振り返った。
「参加者は40人くらいだったけど、みんな情熱に溢れていたのを覚えている。いまここにいる皆さんも、会社に言われたから来たわけじゃなくて、個人の情熱や関心をもって来てくれた方々だと思う。AWS本社ではJAWSみたいなコミュニティが世界中にあったら最高なのにと、いつも話題にしている。ここまで盛り上がっているのは、皆さんのおかげだ。本当にありがとう」(バー氏)
亀田氏はセッション前に登壇者全員とエバンジェリストであるためには何が一番大事かと話し合い、それは間違いなく「Learn and Be Curious」で全員一致したと明かす。
「今日JAWS Daysに来て面白いと感じたことを、明日やろうというのと、今度やってみようというのとでは雲泥の差がある。面白いと思ったら、自分の時間を投資する。そうしていろんなものを楽しく続けていけたら、きっと良い未来が待っている」(亀田氏)