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デジタルペンがタブレットの世界を変える「インカソン with DOCOMO & Fujitsu」 第2回

ペン+タブレットの将来が見えた 開発コンテスト「インカソン」受賞者決定

2018年03月23日 17時00分更新

文● ASCII編集部

提供: 富士通コネクテッドテクノロジーズ

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デジタル彫刻や手書きカレンダー
防災情報共有などさまざまなアイデアが集結

 3ヵ月にわたるデジタルペン搭載タブレット向けアプリの開発コンテスト「インカソン(Inkathon)with docomo and Fujitsu」の受賞者が決定した。審査は3月16日開催のファイナルイベントで実施され、一次・二次審査を通過した24チームが審査員の前でプレゼンテーションとアプリを披露する形で行なわれた。

 インカソンは、富士通コネクテッドテクノロジーズ(以下富士通)とワコム、NTTドコモによる共同開催による、手描(書)き機能の魅力を生かし、事業化の可能性も視野に入れた新しいAndroid用アプリの企画・開発を評価するコンテスト。インカソン開催の動機やその狙いに関しては、前回記事を参照いただきたい。

インカソン with DOCOMO & Fujitsu開催の背景を探る
http://ascii.jp/elem/000/001/643/1643855/

 ドコモが販売する富士通のデジタルペン対応タブレット「arrows Tab F-02K」と、ワコムのデジタルインク技術「WILL」を使って企画や開発を進める。受賞者には、賞金のほかアプリの開発とGoogle Playや「arrows Tab F-02K」搭載のランチャー「Ink Station」での配信に向けた最大500万円の開発支援金が提供される。

 ファイナルイベントでは、まずセミファイナルとして24チームを3ブロックに分け、プレゼンテーションとアプリのタッチ&トライによる審査で3ブロック×3チームを選出。決勝となるファイナルプレゼンテーションでは、選出された9チームに審査員選出枠の1チームを加えた合計10チームによるメインステージでのプレゼンテーションによる審査で受賞者が決定した。

セミファイナルでは、24チームをプレゼンテーションと開発中アプリのタッチ&トライで審査。ファイナルプレゼンテーションに残る10チームが選ばれた

 インカソンのファイナルプレゼンテーションを勝ち抜いた、各賞の受賞者を見ていこう。

【Grand Prize】
「Project MONO/TONE」MONO/TONE(モノトーン)

 最優秀のGrand Prizeは、審査員の全会一致で「Project MONO/TONE」が受賞した。デジタルペンを彫刻刀として扱い、レーザーカッターで素材を削るためのデータを簡単に入力できるファブリケーション・ツールだ。入力した彫刻データは、実際に個人向けのレンタル工作スペースなどに設置されているレーザーカッターを使って、レリーフとして出力できる。

 レーザーカッターは一般的に、コーレルの「CorelDRAW」やAdobeの「Illustrator」などで描いたパスをもとに、素材を加工する用途で利用されている。しかし「Project MONO/TONE」を使えば、レーザーカッターならではの緻密な掘削性能を引き出して、手書きの味を持った滑らかな彫刻データの出力を利用しやすくなる。

 審査員の株式会社ワコム Technology Solutions EVPの井出 信孝氏は講評として「デジタルペンとインクで『書く』以外の発展性を示してくれた。VRやMRといった仮想現実の分野へのつながりも期待できる」とコメントした。

「Project MONO/TONE」MONO/TONE(モノトーン)開発者の有山 隆史氏は個人参加で、システム関係の企業で働いているという

デジタルペンを絵筆として使うのではなく、彫刻刀として掘削したデータを作成していく

――「Project MONO/TONE」制作のきっかけは

有山 隆史氏:奈良の興福寺に「板彫十二神将立像」という木彫りの国宝があります。これを(レーザーカッターで)掘って再現するために、最初はペンタブレットで濃淡のある画像を描いて出力したのですが、この方法だと滑らかな出力を得るのが難しかったのです。そこで、デプス(深さ)を活用した入力にしたところ、滑らかな出力を得られるようになりました。

 講評でも言っていただけましたが、デプスを使った2.5次元や3次元の表現は流行の技術でもあります。この技術をより面白く、深掘りしたいと思ったのがきっかけですね。

レーザーカッターによる実際の出力例。彫刻刀で掘ったかのような切り口のレリーフを出力できている

――インカソンや「arrows Tab F-02K」「WILL」の印象は

有山氏:実はAndroidでのアプリ開発は初めてでしたが、メンタリングではワコムのAPIなど技術的な質問への手厚いサポートに助けられました。タブレットは画面が広くて画素数が多いので、Windowsのような3ペイン構成など、1画面で完結したツールを作りやすかったですね。小さい画面で、作業のたびにメニューを呼び出すようでは使い勝手が悪いので。ここはタブレットの強みですね。

――「Project MONO/TONE」は今後どのように進めますか

有山氏:「Project MONO/TONE」はまだ粗削りなものなので、まずは使い勝手を向上させたいですね。また、TechShopのような工作スタジオだったり、小学生が気軽に使えるようなものにもしたいです。モノづくりではまず楽しさを知ってもらい、そのうえで技術を学んでいくことが重要だと思います。ロボットやAIだと口で言っても、その技術や限界がわからなければ具現化できませんしね。

【2nd Prize】
「手書きジョルテ」株式会社ジョルテ

 カレンダー&手帳アプリの定番アプリ「ジョルテ」に、紙の手帳のような手書き入力機能を搭載。毎日のスケジュールやメモを手書きで記入できるほか、共有にも対応する。これにより、家庭内のパーソナライズされたカレンダーや、店頭のPOPふうカレンダーとしての活用、手書き手帳のようなアクセサリーの販売にもつなげる。

「手書きジョルテ」株式会社ジョルテ

既存のアプリを手書き入力に対応させ、紙の手帳と同様の表現力を持たせた

 審査員の株式会社NTTドコモ プロダクト部 第一商品企画 担当部長の前田 正人氏は「いちばん身近だが、いちばん難易度の高いテーマに挑戦した。そのうえで、さまざまな角度で現実に近いところまで考えられた点を評価した」と講評した。

【3rd Prize】
「HiMAPEN」サークル:SnowWhite

 タブレットとデジタルペンを利用して、防災情報の共有をデジタルに置き換えることを目的としたアプリ。津波対策などの現地調査や災害情報を、現在の紙ベースに近い操作性のままネットワークで共有できるほか、位置情報付きのメモや手書きメモ入りの写真なども残せる。災害時などは、ブラウザーを利用したリアルタイムでの情報確認も可能となる。

「HiMAPEN」サークル:SnowWhite

地震時の対策情報などを、タブレットとペンで入力。これまでの紙でのやり取りと違い、即座に共有や情報の重ね合わせが可能となる

 審査員の富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社 執行役員の林田 健氏は「災害対策という領域で、タブレット+ペン+地図の組み合わせでより有用な使い方を提案した」と講評した。

【審査員特別賞】
「案内状案内」Teamジョルダン乗換案内

 手書きの案内状作成に、ジョルダンのルートナビの技術を組み合わせたアプリ。手書きの案内状に目的地や日時、地図上のルートの軌跡情報を埋め込むことで、SNSやメールで送られた案内状からジョルダンの乗換案内との連携やGoogleカレンダーへの登録、地図上に入力した軌跡のルート案内を利用できる。将来的には、観光案内ツールとしての利用も見込む。

「案内状案内」Teamジョルダン乗換案内

手書きで個性を演出した案内状に、目的地や日時、ルートの軌跡といったデジタルならではの情報や連携機能を持たせる

 審査員のフリージャーナリスト、西田 宗千佳氏は「ペンで描いた地図上の軌跡を時間軸で同期するという、デジタル地図らしい価値を持たせた。また、ビジネスにもすぐに繋がる」と講評した。

【審査員特別賞】
「mojirage」ヘイキンジャー

 自分自身が書いた複数の手書き文字の平均化や、自分の手書き文字と他人の手書き文字を融合することで、より魅力的な文字表現を可能にするアプリ。

「mojirage」ヘイキンジャーは、明治大学の学生チームとして参加した

同じ人物が書いた文字を平均化して、より理想的な文字を生み出す

 西田氏は講評にて「すぐに商品化はできない実験的なものだが、新しい発想が生まれる可能性を持ったインカソンらしい取り組み」と講評した。


(提供:富士通コネクテッドテクノロジーズ)

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