「京都スマートシティー構想」でサイネージ設置、事業モデル構築し持続的運用目指す
おこしやす! シスコ、京福電鉄ら4社が観光周遊促進の実証実験開始
2018年03月13日 07時00分更新
また、京都のベンチャー企業であるアドリンクが提供する、訪日旅行客向け通訳/観光ガイドアプリ「TriPeer(トリッピア)」も掲載している。これは、アプリを通じて京都在住の外国語話者につなぎ、通訳や観光ガイドのサービスを受けられるというもの。サイネージ端末に表示される二次元バーコードからアプリがダウンロードできる。
Spectee(スペクティ)の技術を使った、SNSリアルタイム観光配信「Localive!」では、周辺の特定エリアからSNS(TwitterやInstagram)投稿された写真を自動収集し、不適切と思われる画像をAIで排除したうえでサイネージに表示する。シスコ三村氏によると「“インスタ映え”する観光スポット」が多く表示され、しかも「情報提供側が新たな情報をアップしなくとも、新しい情報がリアルタイムに更新される」ため、このサービスの人気(利用度)は高いという。今回の実験では「嵐山エリア」「太秦エリア」「北野線沿線」の3エリアにおけるSNS投稿を個別に閲覧できるようになっており、沿線にあるほかのエリアへの観光周遊も促す仕組みだ。
ヤマハの「Sound UD」技術と「OMOTENASHI GUIDE」アプリを使い、このサイネージのコンテンツ全体をスマートフォンに持ち出す機能もある。サイネージ端末付近でアプリを起動すると、非可聴域の音声通信でこのサイネージのデータが送信され、同じ画面が表示される。二次元バーコードのようにサイネージの前に立って撮影する必要がなく、一度に多数のユーザーが受信できるため、特に混雑するハイシーズンには有用ではないかという。
そのほか、沿線で開催中のイベント案内、天気予報、時刻表、乗車案内(同路線は車内で運賃精算する仕組みのため訪日旅行客にはわかりづらいという)などの静的なコンテンツも提供する。
なお、端末上部にはカメラが取り付けられており、フューチャースタンダードの技術を使って、サイネージ利用者の人数や性別、年齢層などを自動解析(予測)、集計する。第1期の実証実験においては、1日平均100人ほどが利用し、男女比はおよそ4:6で女性が多く、年齢層としては20代~30代が中心だったという。「このデータを基に、より効果的な広告配信映像などを考えていく」(三村氏)。
京福電鉄「長時間の滞在や沿線周遊のきっかけになれば」
セレモニーでは京都府副知事のほか、京福電鉄、シスコシステムズ、東映京都スタジオ、島津アドコムの各社代表が挨拶。さらに、技術協力各社がコンテンツのデモを披露した。
京都府副知事の山下晃正氏は、かつて海外の観光関係者から指摘された言葉を引用しながら、日本の観光地における課題は「個々の観光スポットのクオリティは世界トップクラスだが、その間をつなぐシステムがうまくないこと」ではないかと指摘。個々の観光スポットだけでなく、地域全体で“おもてなし”レベルを高め、地域全体で観光収益を上げていく取り組みとしてコネクテッドツーリズムを推進/支援していると説明した。「今後、さらに多くの企業に参加していただき、(サイネージコンテンツ/サービスの)内容を充実させていきたい」(山下氏)。
また、今回サイネージ端末を2駅に設置した京福電鉄 社長の岡本光司氏は、嵐山は日本有数の観光地であるものの、たとえば観光客の多くが「渡月橋と竹林の道の間」しか移動しないこと、沿線のほかの駅にも世界遺産の寺院などがあるがなかなか周遊してもらえないことなど「課題もたくさん抱えている」と説明した。「今回のサイネージ設置が、嵐山にもっと長時間滞在していただく、沿線も周遊していただくきっかけになれば」(岡本氏)。
加えて岡本氏は、無人で観光案内などのサービスができるメリットについても触れた。嵐山駅には案内スタッフを配置しているが、西院駅ではそうしたスタッフがいないため、観光客自身でサイネージを活用し、そうしたニーズを満たせる仕組みができたことはありがたい、と語った。
なお、今回の第2期実証実験は今年7月末まで実施される予定。