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グローバル展開に向け、これ以上ない布陣を確立

ソラコム入りした元AWS川本雄人氏にワクワク北米展開を聞いた

大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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北米戦略はスタートアップのデベロッパー先行で

大谷:次に川本さんに北米市場について聞きたいです。これからがんばっていくのに水を差すようで恐縮ですが、私も20年近くIT業界で記者やって、北米進出に失敗した会社をいっぱい見ているので、戦略があれば教えてください。

川本:北米はマーケットとしてももちろん圧倒的に大きいのですが、なによりスタートアップの裾野が広い。だから、スタートアップの開発者にまずファンになってもらって成長してもらうといったAWS的なアプローチがとてもしやすいです。

「スタートアップの開発者にまずファンになってもらい成長してもらいたいです」(川本氏)

そのため、デベロッパーマーケットに対しては、かなり地道な活動なんですけど、シリコンバレーではワークショップをやっています。そんな宣伝しているわけではないのですが、毎回30~40人くらいは集まるんです。北米は日本と違ってユーザーグループが強いわけではないので、ワークショップで習ったことを持ち帰って共有していくんですね。

大谷:エコシステムやパートナー制度はどうでしょうか?

川本:まだ描き切れてないのですが、とにかく「Cloud Agnostic」という立場でAWSのみならず、AzureやGCPも全面的にサポートしていきたいです。先日はAzure IoT Hubとの連携も発表しましたし、MQTT系のモバイルバックエンドサービスを作っているPubNubとSORACOM Beamとの連携も発表しました。

玉川:PubNub連携は、北米で展開している事業者、北米のお客様のために日本より先行して出した初めてのソリューションですね。今後彼らが日本に展開してくれれば、逆輸入されることになると思います。

大谷:ちなみにソラコムの北米オフィスはどちらになるんですか?

川本:僕はAWSやマイクロソフトがあるシアトルを拠点にします。一方、安川はシリコンバレーにいて、スタートアップエコシステムにタッチする役割です。

グローバル展開で日本のスタートアップも後押しできる

大谷:とはいえ、先ほど聞いたところだと、すでに北米でも事例があるんですよね。

川本:はい。実際、Opendoorのようなユニコーンに近いスタートアップにすでに使ってもらっています。不動産物件の下見を効率化するためのスマートロックにソラコムのSIMを組み込んでもらっています。あとはADXNETが作っているスマートウォッチには昨年からeSIMを組み込んでもらっています。eSIMであればとにかく小さいし、過酷な環境でも動作します。次期製品の中で組み込むべく、今検証してもらっています。

大谷:OpendoorはB2B、ADXNETはB2Cですが、どちらも狙えますね。

玉川:日本はセルラーの品質がよくて、カバー率も高いので、セルラーも使われています。一方、現時点での北米のスマートホームはWiFiが主流。でも、品質や障害などの面でWiFiよりセルラーの方がよいのではという意見も出てきています。そこに大きなニーズが眠っているのか注視してますね。

川本:当初、スマートホームなどでの需要はあまり見込んでなかったのですが、WiFiが落ちたときには、セルラーでつながりたいというニーズがあるんです。さらに、テレコムキャリアに依存しない「Network Agnostic」という特徴が受けたのも意外でした。国土が広いので、地域によって意外とひいきのキャリアが違うので。

あとはスマートモビリティのWHILLや農業用センサーのkakaxi、ソースネクストの翻訳デバイスであるPOCKETALKなど、ソラコムを使ってくれている日本のスタートアップがけっこう健闘しています。北米で成功してくれると、私もうれしいですね。

玉川:これってグローバル進出を後押ししてきたAWSと同じ。データセンターで事業を展開すると、どうしても国や地域にひもづいてしまう。でも、クラウドなら同じ仕組みをそのまま世界に持って行ける。IoTの世界においては、われわれがまさに同じ役割を果たせるなと。

川本:日本のスタートアップが現地のキャリアと契約して、IoTサービス展開するのってけっこう大変ですよね。その点、ソラコムであればSIMを購入したその日から使えますからね。

今のソラコムは僕が入社した当時のAWSに似ている

大谷:お話聞いていると、なんだか2人ともシンクロしているというか、共有しているものが大きいですね。

玉川:われわれはAWS出身のスタートアップなので、テクノロジーやビジネス感覚もフィットするし、米国市場もわかっている。もちろん、成功体験を共有しているので、たとえば今はランレートを伸ばすフェーズとか、そういった感覚を説明しないでも理解しているんです。

川本:玉川とは、いっしょにAWSの成長を見ているので、どうやればいいのかおぼろげながらわかっています。特にハイヤリングのところは、以心伝心で理解してもらえてよかたなと。AWSでは要所要所でキーとなる人材を雇ってきたし、グローバルで見ても、伸びているところはやはり優秀な人材が集まっていたんです。

いくらスキルや経験があっても、ソラコムが好きで、伸ばしていきたいという情熱がないと続かない。AWS時代も北米で500人くらい面接しましたが、採用したのは40人くらい。ソラコムになったら、もっと厳しくやっていきたいです。

玉川:そこらへんの優秀な人の尺度が川本と合ってます。

つきあいの長い2人は共有しているものも大きい

川本:今のソラコムって、2011年に私が入社した頃のAWSに似ているんですよ。当時、まだまだAWSは本屋さんのイメージで、イベント出ると出席者のおばさまからはAmazon.comの使いにくさについてこんこんと語られました。AWSが知られるようになってきても、メーカーからサーバー買ってきて、36ヶ月分で割った方が安いと言われ続けてきましたからね(笑)。

玉川:ソラコムの場合、自身で開発まで手がけてますから、より責任範囲が広いし、品質も担保しなければならない。通信とクラウドの間のようなサービスなので、まだまだジャンルとして認知されていないという点もあります。

川本:その意味では、われわれは北米でもサービスをきちんと説明しなければなりません。セルラーのデータ単価ではなく、クラウド上に構築された付加価値のサービスを売っているので、ここを理解してもらいたいと思います。

大谷:なんだか壁を前にして、ワクワク感にみなぎっているのも2人とも共通してますね。がんばってください!

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