麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第21回
Sgt. Pepper'sやスター・ウォーズをハイレゾで楽しむ
麻倉推薦:オリジナルのビートルズ音源は素材、現代感覚のリミックスに驚嘆
2018年02月04日 12時00分更新
評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。1月ぶんの優秀録音をお届けしています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!
『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band[Deluxe Anniversary Edition]』
ザ・ビートルズ
昨年リリースの50周年2枚組CD(UICY-15600/1)と同内容のリミックス/リマスターバージョンがハイレゾで登場。スーパーデラックス版同梱のBDオーディオとは15曲が共通している。昨年のリリース時には、2009年リマスターと2017年版の違いを比較するイベントをしたが、確かにもの凄く違う。低音の量感の雄大さと解像感の高さ、ヴォーカルのメインのフューチャー感、コーラスのハーモニーの明瞭さ、楽器の音色、その輪郭、進行感の明確さ……など、現代感覚を入れてリミックスすると、ここまでの違いが出るのかと、今回も驚いた。
オリジナルのビートルズ音源は「素材」である。今後、DSDやMQAが出る可能性は高い。また違った音になるのが楽しみだ。タイトルのSgt. Pepper'sアルバム曲の本番とテイク違いだけでなく、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」「ペニー・レイン」のテイク違いの音源が収録されているのも、お得だ。今度、四月から早稲田大学エクステンションセンターで、ビートルズの研究講座を始めるが、そこではミックス、マスタリングの違いも分析しようと思っている。
FLAC:96kHz/24bit
Universal Music、e-onkyo music
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ オリジナル・サウンドトラック』
JOHN WILLIAMS
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のジョン・ウィリアムズの作曲・指揮によるオリジナル・サウンドトラック。ハイレゾで聴く「スターウォーズ・テーマ」は感動的だ。ジョン・ウイリアムスのわくわくさせる曲の威力に加え、最新録音のハイレゾ再生だから、始めから昂奮は約束されているようなもの。
冒頭のテーマは、オーケストラのスケール感、低音の分厚さ、全体の塊感の響き、そしてデジタル的なメタリック感もすべてがスターウォーズの一部なのだと、ハイレゾでは実感が強い。映画と離れても、単体で鑑賞に値するハイレゾ作品。
FLAC:192kHz/24bit、96kHz/24bit
WAV:192kHz/24bit、96kHz/24bit
WALT DISNEY RECORDS、e-onkyo music
『Bach: Goldberg Variations, BWV 988』
Ji
「Ji(ジ)」は韓国生まれ、アメリカで学んだピアニスト。ゴールドベルグ変奏曲は天下のグルード演奏が睥睨しており、その後のピアニストはいかにグールドと異なる個性を訴えるかに腐心してきたが、韓国の新進ピアニストJiのデビュー盤は、バロック的な即興感を表に打ち出した。
第2変奏の冒頭は、レガートで個々の音を立てずにフレーズ単位で歌わせるが、リフレインでは、がらっと変わり、冒頭の音にスフォルツァドし、即興的なフレーズも闊達に入る。その後のバリエーションの進行とともに、即興的な感興を加えていく。その意味では先が読めない面白さがある。ジャズ的なシンコペーションも随所に入る。意外性に打たれる演奏だ。音は打鍵を鮮明に粒だてるのではなく、響きを大切にしたサウンド。 2017年8月、ボストン、フレーザー・パフォーマンス・スタジオで録音。
FLAC:44.1kHz/24bit
Warner Classics、e-onkyo music
『ショスタコーヴィチ:交響曲第10番』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ヘルベルト・フォン・カラヤン
カラヤンのショスタコーヴィチはこの交響曲第10番のみだ。しかも複数回、録音している。1969年、カラヤンとベルリン・フィルが訪れたモスクワ音楽院大ホールでの伝説のライヴ録音はメロディアレーベルからリリースされている。
当日、会場にいたショスタコーヴィチが終演後、壇上でカラヤンと並び立ったという有名なエピソードも。本ハイレゾは1966年11月18、30日、ベルリン、イエス・キリスト教会で録音。
実に重厚で豪壮、大器量のショスタコビッチだ。第2楽章Allegroは疾走感、切れ味、シャープネスがスコアの特徴だが、カラヤンは、まさに自家薬篭中のカラヤン節。重く、分厚く、メカニカルで無機的な響きをベルリン・フィルから引き出している。アナログ的な重層感、弦の燦めき感、金管の金属感などのリアリティは、DSD2.8MHzならではの音楽的な表現力だ。最近の演奏ではネルソンス・ボストン交響楽団の繊細にして軽快で鮮鋭な名演とは対照的。重いのだが、駆動力抜群の"カラヤン力"が魅力だ。
DSF:2.8MHz/1bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music
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