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私たちの働き方カタログ 第18回

ビジネスに結びつく働き方改革を自ら実践してきたネットワン

日数制限なしのテレワーク、7年続けられた秘訣を聞く

2018年01月31日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●曽根田元

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その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第18回は、システムインテグレーターのネットワンシステムズ(以下、ネットワン)。2011年から日数制限なしのテレワークを制度化している同社 人事部の下田英樹氏にこれまでを振り返ってもらった。

ネットワンシステムズ 経営企画本部 人事部 部長 下田英樹氏

コミュニケーション慣れのためにオフィスはあえて分割

 働き方改革で必ず議論に挙がるテレワーク。テクノロジー面はすでに確立されているものの、制度や運用に不安を持ち、導入に踏み切れない会社も多い。そんな中、すでに日数制限なしのテレワークを全社導入して7年目を迎えるのが、システムインテグレーターのネットワンシステムズだ。

 ネットワンが働き方改革を始めたのは、これまでメインに据えてきたネットワーク構築という事業を、セキュリティ、コミュニケーション、クラウドなど、より広いICT領域全般に拡大していくという事業変革があったから。今までのように長時間労働で顧客のためにひたすら尽くすというやり方では、価値の提供は難しかった。ネットワンシステムズの下田英樹氏は、「今までの個人商店型の働き方からコラボレーション型、アウトプット創出型のワークスタイルに変えて行く必要がありました」と振り返る。

 そのため同社は経営陣のリードの元、当時まだ先進的だったテレワークを中心に据え、制度や組織、テクノロジー、ファシリティ(設備)まで同時進行で変革を進めた。この中で特に面白いのは、TV会議やUC(Unified Communications)などのICTコミュニケーションに慣れるため、オフィスをあえて分割した点だ。

 同社はもともと湾岸地区の天王洲に本社を構えていたが、2013年に東京丸の内にオフィスを移転。プロフィット部門の社員を移した上で、天王洲オフィスとはさまざまなICTコミュニケーションで結ぶことにした。全会議室でTV会議や無線LANを利用できるようにし、PCやスマートフォンはBYOD(Bring Your Own Device)での利用を許可。テレワークのためにデスクトップ仮想化を導入することで、セキュリティと管理のしやすさを両立させたという。

 導入後に調査してみると、ICTコミュニケーションが増えた社員は約7割に達し、コミュニケーションの質も40%向上。「SBC(Solution Briefing Center)」「Innovative Office」として外部に公開した丸の内オフィスには、現在までにのべ1万人以上が見学している。「8割の社員がICTのコミュニケーションに自信を持つことができました。オフィス分割は正直不安でしたが、ある意味強引に環境を変化させたことが成功につながったと思います」と下田氏は振り返る。

 ネットワンにとってプラスだったのは、働き方改革によって事業シナジーが得られることだ。「今後、ICTコミュニケーション自体がわれわれのビジネスになることはわかっていました。だから、約1000人ずついる天王洲と東京の2拠点間で、きちんとICTコミュニケーションを使いこなせるようになろうというのが経営からのメッセージ。その点、経営陣は一枚岩だったし、知見を得たい営業マンも自ら率先してチャレンジしました」(下田氏)。

「テレワーク推進賞」受賞まで至った働き方改革、成功の秘訣は?

 一方、テレワーク導入で課題となったのは中間管理職の負荷になる業務評価と労務管理だ。そのため人事部では管理職の理解を深めるため、意見交換会や研修、ワークショップなどを集中的に行ない、他部門での業務効率や従業員満足度も見える化。また、労務管理に関しても定期的に会議を設け、客観的なデータに基づき、過重労働の防止に取り組んだ。「会議では、過重労働の状況を報告するとともに、部長自らが抑止するための対策を立案し、実施状況までをウォッチしています」(下田氏)。

 当初、ネガティブな反応を示していた管理職も、経営者が積極的にテレワークを推進していく意図が見えると、少しずつ変わっていった。下田氏は、「管理職は年齢的にも子供がいたり、親の介護を意識し始める頃なので、必要だから自分でも使ってみてくださいとお願いすると話もスムーズです。こうして管理職クラスがテクノロジーの成果を体感し始めると、制度の信頼度がグッと上がります」と語る。

 テレワークを始めて最初の2年は、「管理が大変になった」という声が人事部にも届けられていた。しかし、3年目からは管理職からのクレームは一切やんだという。「今やテレワーク制度をなくすなんて言ったら、管理職からクレームが上がります。それくらい会社に根付いてきています。潜在的には会社の成長にもっと貢献できるはず」と下田氏は胸を張る。とはいえ、人事評価の妥当性は議論の途中だし、シャドウ化する業務管理など課題は多く、働き方改革はまだ道半ばだ。

 2016年には日本テレワーク協会の「テレワーク推進賞」を受賞したネットワン。成功の秘訣を下田氏に聞いたところ、やはり「トップの意気込み」という答えが返ってきた。「新しい働き方に対する意気込みをトップがきちんと表明することで、中間管理職のマインドチェンジにつながり、現場の抵抗感も少なくなります。これはまさに自身が体感したことです」(下田氏)。みなさんの会社はどうだろうか?

会社概要

ネットワンシステムズは、お客様が利用するビジネスアプリケーションを、プライベートクラウド/パブリッククラウドを包括してセキュアに支える「クラウドシステム」を提供する企業です。そのために、常に世界の最先端技術動向を見極め、その組み合わせを検証して具現化するとともに、実際に自社内で実践することで利活用のノウハウも併せてお届けしています。

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