このページの本文へ

麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第19回

ベルリンフィルから西城秀樹まで、11月の名盤

麻倉推薦:やっぱりカラヤン? アナログ時代の名盤がDSDでよみがえる

2017年12月11日 19時00分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

『Topographic Drama: Live Across America』
Yes

 プログレッシヴ・ロックのハイレゾである。「LIVE ACROSS AMERICA」とのタイトル通り、YESが2017年2月に行った全米ツアーのライブ・テイクだ。1980年発表の『DRAMA(邦題: ドラマ)』、1973年発表の『海洋地形学の物語』からのナンバーを中心に収録した。

 1曲目、Machine Messiah。プログレとハイレゾはいったいどんな関係を持つのか、聴くまで半信半疑だったが、意外に(?)良いではないか。プログレ云々する前に、音質水準が高い。解像度が高く、歪みがひじょうに少ない(これはどうなのかとも思うが、少なくとも録音に由来する歪みは皆無)、音像もクリヤーだ。大騒音が聴き手目がけて襲来するという感じではまったくなく、きちんと明瞭に、バランスよく録られた複数の音源が音場中に整然と位置する。ヴォーカルも豊かなボディ感で、質感も良い。最新録音ならではの新鮮さも聴きどころだ。でも、整然としすぎで、あまりプログレっぽくないなあ。

FLAC:44.1kHz/24bit
RHINO、e-onkyo music

『チャイニーズ・バタフライ』
チック・コリア、スティーヴ・ガッド

 ジャズ/フュージョン界の2大巨人、チック・コリアとスティーヴ・ガッドが組んだスーパー・バンドのデビュー・アルバム。煌めく才能の集合だから、レコーディングではほとんどのトラックが、ファーストテイクでOKだったという。

 1曲目、チックの盟友ジョン・マクラフリンがこのバンドのために提供した「 チックズ・チャムズ」。ノリとキレが抜群にシャープで、息の合ったアンサンブルを聴かせる。バックのパーソネルも名手ぞろいで、回す即興が尋常じゃない。ピラミッド的に低音がしっかりとし、キーボードが上質で、ドラムスの切れ味がシャープ。スティーヴ・ガッドの名技がたっぷりと堪能できる。6曲目、名曲「リターン・トゥ・フォーエヴァー」の再演も嬉しい。

FLAC:96kHz/24bit
Universal Music、e-onkyo music

『渡良瀬橋 (森高千里30周年記念Version)』
森高千里

 24年ぶりに新アレンジ。正式には「森高千里30周年記念Version」。重い渡良瀬橋だ。オリジナルのイメージは軽快で、カノンコードのノリが快適だったが、本作は、弦の厚い響きから始まり、ヴァースに入っても主体はリズムでなく、ハーモニーだ。するとオリジナルとは違う新しい切り口が浮かび上がる。ふるさとを懐古する歌詞内容だが、オリジナルは、若い時分に、より若い時を回顧しているのだが、今回は今の年になった主人公が、遠い昔、遠い想い出を懐かしく思い出すという雰囲気が濃厚だ。重いハーモニー、重いリズム、音数の多さが幾星霜の歳月を想起させる。

FLAC:48kHz/24bit
ワーナーミュージック・ジャパン、e-onkyo music

カテゴリートップへ

この連載の記事
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中