消費大国のアメリカでも
モノを“持たない世代”が育ちつつある
筆者の買い物をしたくなくなった気分とは裏腹に、今回のサイバーマンデーの売上は過去最高を記録すると予測されています。各種経済レポートを見ると、米経済の7割が個人消費によって占められているそうです。アメリカ人が日常的に断捨離を覚えると、不景気などの影響が出てしまいそうですね。その点、筆者の行動は非常に危険なものだったのかもしれません。
とはいえ、アメリカでも持たない世代が育っています。筆者が仕事場にしているWeWorkも、以前に本連載で紹介したスマホ活用のカーシェアサービスGIGも、持たない、シェアすることを前提にして、しかし不動産や自動車を利用するライフスタイルを維持する、という仕組みです。
断捨離で捨てられない人へのアドバイスとして、「写真を撮って捨てる」という方法があります。写真に撮るぐらいだったら、最初から実態がなくデータで受け取れば良いのにと思うと、音楽や書籍の類は最初からデータで受け取れるようになっていますね。
筆者ももうCDプレイヤーがないので、音楽はデジタルでしか持っていません。しかも購読型サービスになったので、所有しているとも厳密に言えません。その点、ものが増え続ける事態には、そのうち歯止めがかかっていく可能性はあります。洋服までデータになったら面白いですね。
しかし今度は、データや購読型サービスの断捨離が必要になりますよね。もうこのデータやアプリは使わないからスマホから削除しようとか、対して使っていないアプリの購読を打ち切ろうとか。前述のように、サイバーマンデー近辺を購読の開始日にしておけば、ものとともにサービスをそれぞれ断捨離でき、落ち込んでセールでも反応しなくなるのではないでしょうか。
その点、こうした断捨離をかいくぐって残ったモノやサービスは、長く使われる、非常に強いつながりを持つものになっていくでしょう。カメラとか、お気に入りのヘッドフォンとか、Adobeのアプリ購読とか、この原稿を書いている漢字変換ソフトのATOK、テキストエディタのUlyssesの購読などがそれに当たります。
そしてなによりスマートフォンとノートパソコン。やっぱりこの2つのデバイスは絶対必要です。これらが他のモノに置き換えられたり、統合する日も来るのかもしれませんし、実態がなくなるのかもしれません。断捨離に耐えうるテクノロジーの姿については、今後も注目していきたいと思います。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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