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サービス運営者が明かす、検索連動型広告の売上の作り方

2017年10月31日 10時34分更新

文●D2Cスマイル

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検索連動型広告「D2C Performance Ads」が、2017年11月末で提供終了(広告配信終了)します。そこで、提供者であるD2Cの担当者が提供者目線での運用型広告を解説します。

多くのマーケターの皆さんが、自社サービスへの集客や購入・成約を目的としてGoogle Adwordsをはじめ検索連動広告サービスを利用し、日々運用をされていると思いますが、その半面、検索広告サービス自体を運営し広告を配信するプレイヤーは、以前言及した通りさほど多くありません。Googleの市場シェア(Yahoo!もシステムはGoogleなので)が圧倒的である市場感を考えると、今後も登場してくることは考えにくいでしょう。

世の中、マーケター/広告主視点での検索広告TIPS情報はごまんとありますが、検索広告サービスの運営視点での「検索連動広告の売上の作り方」を書き残すことは、歴史的にほんの少しは意味があるのではないかと、検索広告サービスの仕組みと運営の考え方をさわりだけですが、まとめます。

検索連動広告の売上公式

サービス提供者から見た場合、検索連動広告の売上は下記の公式で表現できます。

売上 = 検索クエリ数 ×️ RPS(Revenue Per Search)

検索連動広告の売上公式

「検索クエリ数」とは、メディア(検索窓)から広告サービス側にリクエストされる検索の総数、すなわち配信先検索サービスの利用数です。ここで発生する検索リクエストの「数」と「内容」が全体の収益性を決める出発点となります。検索が発生しない限り、広告が表示されないので、当たり前ですね。

指標「RPS」は Revenue Per Search の字面の通り、1検索あたりの収益性を示します。これは、下記3つの掛け合わせによる結果指標です。

RPSを構成する指標

  • カバレッジ(Coverage、全検索リクエストに対する広告表示率)
  • ページCTR(CTR=Click through rate、1ページあたりのクリック率)
  • クリック単価(CPC=Cost per click)

検索クエリを提供するのはあくまでメディアなので、検索連動広告サービス提供者は、広告主への販売活動を通してRPSを最大化し、効率よく配信先メディアに収益を返すことが使命です。
ここからは、各指標の上げ方と、それぞれの指標の相関性を説します。

1. カバレッジ


カバレッジを上げるもっとも重要な営みは、営業活動です。広告主が集まらないと、検索に対して広告を表示できません。多岐にわたる検索キーワードに対してのカバレッジを広げるためには、「幅広いジャンルの広告主を獲得してくること」「1広告主あたりの入稿キーワード数を広げていくこと」の2軸が重要です。

カバレッジは配信ロジックによりコントロール可能です。例えば、部分一致キーワードの扱い。広告主から入稿された部分一致キーワードをどの程度まで一致とみなして表示させるか(類義語拡張をするか、など)によって、同じ入稿状況下でもカバレッジが変動します。

しかし、カバレッジが上がればいいわけではありません。関連性の低いキーワードで広告表示がクリック率の低下を招き、結果的にRPSを下げる恐れがあります。部分一致の過剰表示もクリック率低下のほか、広告効果低下に伴う入札CPCの低下や出稿停止に繋がる恐れもあります。メディアとしての検索結果の信頼性を毀損することにもなります。あくまでも「検索連動広告」であることをわきまえた「運営者側の良き塩梅」が重要です。

2. クリック率

検索広告は原則クリック課金型なので、高いクリック率の維持が重要です。Google、Yahoo!をはじめ各社とも入札制かつスコア順列の配信ロジックが採用されていますが、クリック率は広告の掲載順位(広告ランク)を決めるスコアづけにも大きな意味があります。クリックされやすい(=関連性の高い)広告ほど上位に出した方がユーザーにとって有益かつメディア収益性が高い理屈です。複数広告主による競争が働くと、各広告主が上位掲載を目指しCTRを上げるための運用改善をするを全体のクリック率が底上げされていく好循環になります。前述の通り、配信ロジックやサービス運用方針をカバレッジに振りすぎると、クリック率は低下する可能性があります。ロジックによる絞込みのほか、キーワードと広告の関連性を人力で審査(フィルタリング)する営みも重要です。

検索結果での広告の見た目の変化も、クリック率に直結します。Google広告でおなじみのサイトリンクや電話番号表示など、クリエイティブフォーマットをリッチにしていく考え方や、広告背景色の変更やオーガニック検索結果とのデザインの同化(ネイティブ広告と同様の考え方ですね)により、案件やキーワードを問わず全体的なクリック増に繋げられるケースもあります。広告サービスは意図とは関係なくメディア側が実施したリニューアルで、クリック率が上下することもあります。

3. クリック単価

検索広告は原則入札制なので、クリック単価を上げるためには「同一キーワードを複数社で入札競争させる」ことが必要です。ここでも営業活動が重要です。

ここでRPSに関連するもう一つの指標「Depth」を紹介します。

Depth = 広告表示回数(impression) ÷ 広告応答クエリ数(検索クエリ数 × カバレッジ)

1ページ内に複数の広告枠がある検索連動広告で、1ページに平均何枠の広告を表示できるかの指標で、競争環境の成熟具合を示します。Depthが1に近いと、競争環境が整っていないため、クリック単価も低くなります。Depthをカテゴリ別に分析することで、営業強化すべき業種を明確化できます。

メディアやサービス側が何らかの閾値でフロアプライスを敷く(フロアプライス以下の広告は表示されない)仕組みを持つことで、一定の単価感が維持できます。一方、高すぎるフロアプライスにマッチしない(獲得予算の厳しい)広告主からの出稿が見込めなくなるデメリットもあり、クリック率は維持できるがカバレッジやDepthに苦戦する状況も発生します。

クリック率とクリック単価の相関性

画像はイメージです

広告のスコア(≒掲載順位)は大まかに「広告の品質」と「入札クリック単価」の2軸で決まります。配信事業者はこれらの比重を決める独自の「ツマミ」を動かすことで収益の最大化を図ります。広告品質の比重を高めると平均クリック単価は下がり、クリック単価に重きを置きすぎると、クリック率が下がります。クリック率とクリック単価を掛け合わせた指標が最大になるポイントを見極めることがプロダクト運営の腕の見せ所です。クリック率の前提となる要素として、前述のカバレッジに関するロジック調整も忘れてはいけません。しかし、ロジックによる全体最適の影響で、個別案件に掲載量や落札クリック単価といった各指標に変化がもたらされるため、運用者(マーケター)が翻弄される要素でもあります。

大事なことは検索広告が教えてくれた

サービス提供者視点で、RPSを最大化させるための重要な要素を紹介しました。RPSを形成する各KPIとその変動要因をウォッチしながら、ロジックのチューニングやメディア側の実装変更、販売活動や案件コンサルティングなどの打ち手に落とし込み、サービスを運営します。
文章にすると、世に数多ある運用型広告で実施している営みと同じように見えますが、検索結果は特殊なメディアです。検索キーワードが広告のトリガーになり、最強のターゲティング要素を組み合わせることで、唯一無二の面白さと複雑さを備えています。私のビジネス人生は検索連動広告と共にあり、デジタル広告、ビジネ、サービスづくりの面白さと難しさ、メディアの視点、広告主・広告会社の視点、常に進化を続けるGoogleの凄さ、書ききれないほど多くのことを検索連動広告から教わりました。

最後になりましたが、D2C Performance Adsをご愛顧いただいた広告主様、広告会社様、ご導入いただいたNTTドコモをはじめとする媒体社様、また今日に至るまでにご協力を賜りました全ての皆様に心から御礼を申し上げます。2010年の「iMenuサーチ」配信開始から7年間のご愛顧、本当にありがとうございました。

(記事提供:D2Cスマイル

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