ランサムウェア対策につながるバージョン管理
五十嵐社長は、日本マイクロソフトやアップルに勤務した経験があるが、「OneDriveはアップルでは使いにくい。またiCloudはAndroidでは使いにくい。だがDropboxはもともと様々なデバイスに対して、ニュートラルな立場でモノづくりを進めてきたサービス。すべてのデバイスに対して、広く使いやすい環境を提供しているのはDropboxだけである」と胸を張る。
一方でバージョン履歴を管理していることは、ほかのストレージサービスとは異なるDropboxならではの特徴にもつながっているとも語る。バージョン管理は複数の人が一緒に作業する際にも便利だが、それだけでなく、ランサムウェア対策にも有効な点が、ここにきて評価されているという。
実際ある建設会社では、現場事務所に置かれたファイルサーバーに、多くの人がアクセスするなかで、ランサムウェアの被害が発生。身代金を要求される事件が発生したという。
「ひとつの現場事務所ではDropboxを使っておらず、仕方なくビットコインで身代金を支払ったが、結局ファイルは返ってこなかった。だがDropboxを使用していた現場事務所では、Dropbox上にはランサムウェアに感染する前のファイルが残されており、そこからファイルを復活できた。当社のサポート部門に連絡してもらえば、ひとつひとつのファイルの復元作業をすることなく、一括復元が可能になる。Dropboxは、セキュリティー、バックアップにも強いのが特徴。この機能があるから、Dropboxを採用した企業も多い」(Dropbox Japan ソリューションアーキテクトの井口和弘氏)という。
そして、スピードも大きな特徴だとする。
「たとえば建設会社で取り扱っている文書は、一つの現場で1TB前後であり、図面などが頻繁に更新されている。そうした大量の文書を更新したり、読み出したりする際にも、Dropboxが速いといわれる。ほかのサービスと比較して、スピードを理由に導入した企業も少なくない」(同)
Dropboxでは、更新時の差分データだけを同期する差分同期、同一サブネットの配下ではPC間で直接データを同期するLAN同期、アップロードが完了する前にほかのユーザーがダウンロードできるストリーミング同期という3つの同期方法を採用。さらにファイルをブロックに分割して処理し、複数のスレッドによる並列送受信ファイル更新時には、変更されたブロックだけを送信したり、通信が途絶えた際は、回復時に同期を完了していないブロックから同期を再開したりできる。こうした仕組みがパフォーマンス向上に寄与している。
加えて、コストの観点からのメリットも訴求する。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ