ゲーム中のサウンドは単に雰囲気を盛り上げるためだけに聴くものではない。特に対戦要素の高いFPSやTPSでは、周囲で何が起こっているか、画面外から近づいているのか遠ざかっているのかという重要な情報を与えてくれる。
面倒だからつい液晶ディスプレーやノートPC内蔵の小さなスピーカーで遊んでしまうかもしれないが、あの小さなスピーカーで出力できる音なんてタカが知れている。大事な情報をごっそり捨てているのに等しい行為だ。
だからゲームにガチで取り組む人は皆ヘッドセットを使う。装着感とか音色の好みとか人それぞれだが、Kingstonが“HyperX”ブランドで出しているゲーミング特化のヘッドセットシリーズの最新モデル『HyperX Cloud Alpha(以降Cloud Alpha)』に注目したい。
既に当サイトでは同社のヘッドセット「HyperX Cloud Revolver」をレビューしているが、Cloud Alphaはその下位モデルといったところだ。いかにもゲーミングデバイスっぽいデザインを施したCloud Revolverに対し、このCloud Alphaはどちらかと言うとデザインのみならず機構全体がシンプルにまとまっている。
本製品はPCだけでなくスマートフォンやゲーム機でも使えるようになっているため、Cloud Alpha本体から出るケーブルはCTIA準拠の4極プラグになっている。スマートフォンやゲーム機の場合はこれを直結して使い、PCに繋ぐ際は同梱の二股分岐ケーブルを追加する。
地味に嬉しいのは同社の従来製品はこの4極プラグケーブルが本体直出しだったのに対し、Cloud Alphaでは着脱可能になったことだ。持ち運びする時に4極プラグケーブルの根元に力がかかることを防げるのはイイ。
ヘッドセットの命であるハウジング部分は大きく、耳をすっぽり覆うデザインになっている。このハウジング内部に直径50mmのドライバーが埋め込まれているが、ハウジング内部は大きく2つの空間(チャンバー)に分割されており、ひとつは中音、もうひとつは低音が歪みなく響くように設計されている。
外見から分かる通りCloud Alphaは密閉型なので装着時に耳が痛くなることを恐れる人もいるだろうが、Cloud Alphaのイヤーマフは大きく、耳全体をすっぽり覆うデザインになっている。
イヤーマフも質の高い低反発素材が使われているが、個人的には上位版Cloud Alphaよりも柔らかく、肌触りも良い印象だ。ヘッドバンドと頭頂部の接触部にはもう少し堅めの低反発素材が使われており、密閉型にありがちな“耳や耳周囲が圧迫されて苦痛を感じる”ことはない。箱から出したその瞬間から最高の付け心地が味わえる。
Cloud Alphaはシンプルなステレオヘッドセットなので、音の定位感等は接続するPCやゲーム機のスペック、ゲーム側の音響システムによって左右される。だがそれでも安物のヘッドセットで聞こえなかった音がしっかり聞こえるようになった。
特にPUBGこと「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGOUNDS」では効果絶大。マンション内に立てこもっていても、すぐ近くを通る他のプレイヤーの足音がしっかり聞こえる(なお勝率は腕の問題で変化しなかった模様)。前述の通りステレオヘッドセットなので、敵が来る方向をピンポイントで検知するまでには至らないが、立てこもりモードになっても周囲の状況が音で分かるようになるのは極めて有用だ。
シンプルだがツボを押さえたつくり
Cloud Alphaは、機能的にあっと驚くような機能を備えた尖った製品ではなく、シンプルで実に堅実的なつくりのヘッドセットだ。それゆえに、細部のつくり込みや音のチューニングにどれだけ手間をかけているかがカギとなるが、その点では本製品は十分合格点を出せる。
実売1万3000円という価格に価値を見いだせるかどうかがキモになるが、突飛な機能は排除してゲーマーのツボを押さえた製品と言えるだろう。安物のヘッドフォンや内蔵スピーカーでゲームをプレイしているなら、大枚叩く価値は十分にある。良質なヘッドセットでゲーム環境を一変させてみたい人にオススメだ。