土佐出身の坂本龍馬を始め、幕末に活躍して名を残した名士たちも、みな外に出て外のモノサシを知った者たちだったと小島氏。地域を越えて志を同じくした人間がコミュニティを形成し、活躍したのだ。
「Amazonが広がった背景にもコミュニティがありました。やってみたことをお互いに発信し合うことで、それを知った人が次のことを試し、また発信します。コミュニティの中にいる人と外にいる人とでは、クラウドの理解に大きな差が生まれます」(小島氏)。
小島氏はここまでの話をまとめ、高知に対して次のような提言を行なった。
「人口減少は日本全体で起こっていることですが、その中でも高知は進んでいます。つまりいま高知で起きていることは、この先日本全体で起こりかねないことです。その中で生き残るためには、越境者を高知に呼び込む必要があります」(小島氏)。
具体的には、高知進出企業への「通行手形」支給、コミュニティ全国イベントの開催支援、「地産外商」の徹底の3点を挙げた。通行手形とは、交通費のこと。東京や他の地方と高知を行き来する交通費を支給することでスタートアップやサテライトオフィス展開の候補地として高知の魅力が高まる。またコミュニティ全国イベントの開催を支援すれば、エッジな領域で外のモノサシを知っている人が集まるきっかけになる。地産外商については、IT化により距離の壁がなくなりつつあることを活かし、他の地域や海外にも進出すべきと語った。そして最後に「越境者が活躍しやすい環境を高知に!」と呼びかけて、小島氏はトークを終えた。
その後の質疑応答で「人口減少などの課題を抱えているのは他の田舎も同じなのではないか」という声が上がったが、それに対して「課題先進県である高知でその課題を解決できれば、先行者になれます。その他の地域に展開する際にも優位に立てるでしょう」と答えた。
参加者同士が結びついていく工夫も
トークセッションのあとに用意されていたのは、簡単なワークショップ。ごく簡単なものだったが、人と人をつなぐ工夫が凝らされたワークショップだった。偶然近くに座っている参加者同士で数人のグループを作り、まずは自己紹介。仕事やプライベートでどんなことをしているか、簡単に紹介しあう。その後の数分間、同じグループの人のスキルや経験を活かしてどんなコラボレーションができるかを考え、最後にそれについてグループで語り合うというもの。自分から「高知に役立つこんなことができます」と言い合うのはシャイな日本人向きではないが、グループ内で評価し合うことを出発点にすれば会話も弾む。
登壇者が聴講者に向かって喋るだけのセッションでは、参加者同士の結びつきを作るのは難しいが、このワークショップで新しい縁が生まれ、懇親会でのトークにもつながる。
ワークショップのあとは、高知企業の紹介セッション。アイレップ、SHIFT PLUS、Nextremer、パシフィックソフトウェア開発の各社が、自社事業の紹介や高知でビジネスを展開する意義について語った。
そして最後に用意されていたのは、高知の名産品を使った料理や地酒を用意しての交流会。参加者はうまい酒と料理に舌鼓を打ちつつ、そこここで輪になって会話に花を咲かせていた。
この「高知家ITコンテンツネットワーク」は1回だけの取り組みでは終わらず、今後も継続していくとのこと。既に第2回は2018年1月に開催予定とのこと。高知へのU/Iターンはもちろん、サテライトオフィスやテレワークによる地方採用を考えている読者は、ぜひ参加を検討してみて欲しい。