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年間200回のイベント、壁のない執務室、そして広大な空きスペース

余白だらけの大阪オフィスは効率化を目指さない今のさくらを表している

2017年09月20日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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採用目的のために新オフィスを作ったわけではない

大谷:これだけ広大できれいなオフィスをグランフロントに作るのは、採用目的も大きいのではないですか? 

打ち合わせスペースにはラグジュアリーな家具も

田中:うーん。実は最近、あまり採用に力入れてないんですよ。というのも、3年前は170人だったのですが、今はグループ全体で500人規模にまで拡大しています。だから今は社員を採用するよりも、いかに働き方を変えていくか、どれだけアウトプットしていくかに注力しています。業界を見回せばどこでも人が足らないという状況なので、これはちょっと珍しいのかもしれません。まあ、採用とか、営業とか、目的を決めてイベントやり出すと、どうしてもイヤらしくなりますからね。よく意外と言われます。

大谷:採用目的できれいなオフィス作るところも多いので、今回の大阪オフィスもそんな感じだと思っていました。私の予想が完全に外れました。

田中:どちらかというと、社内での人事異動が多いですね。技術の人が人事に行ったり、人事の人が出向してグループ会社に行ったり。あれだけオフィスがきちんとしているなら、東京から大阪に戻りたいという社員もいます。

大谷:ある意味、東京のかっちりしたオフィスより、大阪の自由なオフィスがいいという人も多いでしょうね。

とにかく壁のない開放的な執務室

田中:とはいえ、採用目的がまったくないというわけでもないんです。私も5年くらい「地方だから待遇が違うというのはおかしい」と言ってきましたが、待遇が大阪と東京で変わらないという会社も増えてきましたしね。やりがいのある仕事があり、待遇が東京と同じで、オフィスがきれい、いっしょに働きたい優秀な人がいるというのが重要なので、今回の新オフィスもその重要なピースではあります。

大谷:働き方の話だと、田中さん個人としてはリモートワーク派になるのか、会社で仕事しよう派になるのか、あるいは両方許容なのか、どれなんでしょうか?

田中:やっぱりオフィスはみんなが集まる場所。業務だけなら別にどこでやってもいいんですが、会社自体もコミュニティなので、勉強会はオフィスでやったほうがよい。もちろんリモートでもできるのですが、参加者同士で空間を共有して、みんなで懇親会するというのは1つのパッケージだと思うので。

壁のある会議室は3つだけ。あとは基本的にオープンスペース

情報をゲットするのであればリモートでOKなんですが、勉強会ってそれだけじゃないですよね。会社も同じで、繰り返しですが、業務はどこでやってもいい。でも、会社が業務だけで成り立っているのであれば、ちょっとさみしいなと思います。成長する場所であったり、みんなでスプラトゥーンやってもいいかなと(笑)。

大谷:でも、「会社は業務する場所に決まってるだろう」という人も多いですよね。私も編集者時代はみんな泊まり込みで月刊誌を作っていたので、会社はコミュニティだよねという一体感はわかります。それを単にブラックな会社の一言で済ませてほしくないなと。

田中:その意味ではさくらはいまもオーソドックスな会社ですよ。唯一変わったのは長時間労働をやめたこと。基本はオフィスで仕事するのですが、リモートワークでも障壁にならないようにしていきたいとは思っています。1ヶ月くらい大阪や北海道で仕事するとか、社員には実践してほしいですね。

半分近く余っている余白のスペースはどうやって使うのか?

大谷:あと、現状大阪オフィスってすごいスペース余っているじゃないですか。グランフロント1フロアまるごと借りているわりに、ほぼ半分くらいはがらんどう。ちょっとびっくりでした。アスキーの編集者としては、なんだか余白は埋めたいと考えてしまうんです。なにか目的はあるのでしょうか?

執務室を抜けると奥に見えてきたのは広大な空きスペース

田中:うーん。そうですねえ。うーん(長考)。もちろん拡張を見据えてという意味もあるにはあるんですが、正直、本当にここまで余白が必要か、私もよくわからないんですよ。

大谷:ではどう使うか、決まってないんですね。

田中:その意味では、大阪オフィスのその余白が、効率化を目指さない今のさくらをもっとも表しているのかもしれません。大阪駅から至近のグランフロントを半分も使ってない。言うなればムダですよね。でも、これは今の会社の方向性だと思います。

大谷:たとえば、データセンターって、ラックにいかにサーバーを詰め込むかという意味では、余白を埋める作業の権化のような気がするんですよ。それを今までやってきたさくらさんとしては、あのスペースは気にならないのかなと。

田中:データセンターも今までは確かにきっちり詰めることを考えてきましたが、石狩の3号棟は余らせることを考えて作りました。ラックの一列を全部埋めるから、あとで構成変更するのも面倒になるんです。あと、石狩データセンターは1号棟と2号棟は電源があまるという屈辱的な出来事がありました。一般的には電力が足りなくて、ラックが余るんですが……。

その点、石狩の3号棟は一部屋埋める電力供給量がないので、必ずスペースが余ります。だから、今まで20ラック前提でやっていたのを、15ラックくらいにしています。建ったばかりなので当然と言えば当然ですが、サーバールームはびっくりするくらいスカスカです。2000ラック入るのに、今は5ラックくらいしか使ってない。みなさんに「こんなに埋まってなくて大丈夫なのか?」とか、「ここまで埋まってないなんて、会社が傾くんじゃないか?」とか言われます。

大谷:そりゃ言いますよね(笑)。私も言うと思います。

田中:でも、ハコも安いし、減価償却費もたいしたことない。あそこがまったく埋まらなくても、「もったいないな」というだけです。

なんだか将来の可能性を空間的に制限されるのはいやじゃないですか。多くのリモートワークって、オフィススペースを減らすという裏の目的があります。フリーアドレス制も同じで、導入されると個人のスペースはだいたい減らされますよね。でも、今回の新オフィスはフリーアドレスになって、一人あたりのスペースは大きくなっています。

バーカウンター風の作業スペース。壁にはプロジェクターがあり、打ち合わせもできる

大谷:年々狭くなるうちの会社からすると、うらやましいかぎりです。

田中:まあ、効率化は重視しないとは言え、会社なので5~10年後の利益率を上げるために効率化が必要なところもあります。その意味では小さい最適化はやめ、マクロ的に見て効率的な方法を考えています。

コストの観点で見ても、オフィスのコストより、人件費の方が全然高いですからね。グランフロントの家賃は確かに高いですが、東京に比べたら全然安い。本社だし、東京と同じくらいのコストかけてもいいんじゃない?と考えたら、大阪が広くなっただけです。スペースが足りないからといって、将来的に引っ越す必要もないし、用途が変わるかもしれないし、余白スペースは持って置いた方がよいんですよね。

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