Somehow, Someday, Somewhere
Ai Kuwabara with Steve Gadd & Will Lee
各方面から注目されている、若きジャズピアニスト、桑原あい。ウィル・リー(エレクトリックベース)、スティーヴ・ガッド(ドラムス)と協演したトリオ作品だ。タイトルチューン「Somehow It's Been a Rough Day」。ピアノの低音の機敏な雄大さ、中域の緻密な安定感、高音の輝ける燦めき感が、音の快感として耳にストレートに飛び込み、体に音のシャワーを浴びせる。エレクトリックベースの立ち上がり、立ち下がりが鋭く、俊速。
2曲目「home」も快感的なスウィング感。音の流れの弾みと剛毅さが印象的。音場の充実度がひじょうに高く、濃密だ。最後のピアノの超低音の一撃は衝撃。3曲目、バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」から「Somewhere」の詩情と憧れ感も素晴らしい。桑原はバーンスタインに心酔している。「一見簡単に思えると所とか、もう本当に緻密に構築されていて。変わったアレンジはせずに、原曲に沿うアレンジにしました」と、インタビュー(http://www.e-onkyo.com/news/596)で述べている。ピアノは一音一音がシャープに立つのだが、同時にソフトでウォームだ。エレクトリックベースの旋律弾きも明瞭。6曲目、ビル・エバンスの名曲「ロ短調ワルツ」からは優しさと剛毅さが聴ける。
WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
キングレコード、T.O.M. RECORDS
El Cumbanchero
Manhattan Jazz Quintet
結成30周年の「マンハッタン・ジャズ・クインテット」が、新メンバーで初録音したスタンダード・ナンバー集。1曲目「El Cumbanchero」。音楽的エネルギー全開な目くるめくようなゴージャスなサウンド。ジャズ演奏のセオリー通り、初めと終わりがトゥッティで、間に各楽器のソロフューチャーを挟む形式だが、トゥッティでの量感、突きぬけ感と、ソロ演奏での質感の高さが聴きどころだ。2曲目「Besame Mucho」。都会的で同時に野性的。各楽器の明瞭さと、エネルギッシュな感覚、痛快な突進感はマンハッタン・ジャズ・クインテットの真骨頂。
リーダー・ピアニストのデヴィッド・マシューズは、アレンジについてe-onkyo musicの特設サイトhttp://www.e-onkyo.com/news/610/で、「トランペットとテナー・サックスを加えた5人という編成がMJQの最大の特徴でもあり、魅力ではないかと思うんですが」との問いに、「編成自体は比較的オーソドックスだが(中略)、従来なら2管がユニゾンでメロディを奏で、それぞれのソロがあって、またメロディを一緒に吹くというアレンジが一般的なんだが、僕のアレンジでは、音楽的にけっこう複雑な役割を二人に与えている。メロディとカウンター・ラインといったようにね。強いて言えば、それがバンドにユニークな色を与えているんじゃないかな」と答えている。マシューズが目指した音作りの秘密が、ハイレゾで明らかになるのが痛快だ。
WAV:192kHz/24bit、FLAC:192kHz/24bit
キングレコード
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